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【オリジナル作品】短編・長編小説、俳句

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オリジナルの短編や長編小説、他に俳句などの作品をまとめています。
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#花言葉

冬眠していた春の夢 最終話 一輪草

冬眠していた春の夢 最終話 一輪草

 それから二年後、私と仁美は元気に同じ高校に通っている。
 家のリビングには、兄や家族4人で写っている写真がいくつも飾られ、家族4人、いやいや、祖父母の写真も入れて家族6人、賑やかに過ごしている。
 そして、兄の部屋のままだった母の部屋は、大人の女性の、ちょっとお洒落な部屋になっている。

 それから…、兄の葬儀から半年後、名古屋の叔父が亡くなった。
 肺ガンだった。ガンが発見された時は、既にステ

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冬眠していた春の夢 第28話 不在の友を想う

冬眠していた春の夢 第28話 不在の友を想う

 夢の中でおじいちゃんが手に持っていたのは、ウラシマソウの実だとわかった。
 ネットで調べたところ、春から初夏にかけて開花したウラシマソウは、秋が深まるとその雌株には果実(偽果)ができて、赤いトウモロコシといった感じになるそうだ。

 「もう美月の見る夢の信憑性は証明されたから、きっとこの実を付けたウラシマソウが根元に咲いている大きな楠木の近くにお兄さんはいるんだろうね」
 仁美の言葉に異論を唱え

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冬眠していた春の夢 第7話 ウラシマソウ

冬眠していた春の夢 第7話 ウラシマソウ

 小さな庭にある小ぶりな梅の木の蕾が膨らみ始めた頃から、私はお馴染みのあの夢を見始めた。
 だけど、今まではいつも同じ内容だけだったのに、実家に戻ってきてからのその夢には、違った要素が組み込まれていた。
 霧の中から3人の少年が現れる前に、なんとも不気味な植物のクローズアップがあった。
 そして、たぶん私がいつも「お兄ちゃん」と呼ぶ、春馬という少年だと思われる声がした。
 「それ、ウラシマソウって

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