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冬眠していた春の夢 第7話 ウラシマソウ
小さな庭にある小ぶりな梅の木の蕾が膨らみ始めた頃から、私はお馴染みのあの夢を見始めた。
だけど、今まではいつも同じ内容だけだったのに、実家に戻ってきてからのその夢には、違った要素が組み込まれていた。
霧の中から3人の少年が現れる前に、なんとも不気味な植物のクローズアップがあった。
そして、たぶん私がいつも「お兄ちゃん」と呼ぶ、春馬という少年だと思われる声がした。
「それ、ウラシマソウっていう毒草だぜ。触ると死んじゃうんだ」
私は初めてその夢を見て目醒めた朝、すぐにスマホでウキペディアを見てみた。
【ウラシマソウとは】
・北海道南部から九州まで日本全国の広い範囲に分布するサトイモ科テンナンショウ属の多年草。3~5月に咲く大きな花は怪しげな雰囲気を持ち、初めて見る人々の多くは「何、コレ!」と口にする。特異な野草に見えるが、暖帯から熱帯まで広く分布するテンナンショウ(天南星)の仲間で、日本には30~40種ほどが自生する。
・ウラシマは浦島太郎に由来し、学名もArisaema urashimaとされる。細長く伸びる鞭のようなものは花序の附属帯で、牧野新日本植物図鑑によれば、これを浦島太郎の釣り糸に見立てて名付けられたという。しかし、手で触れるのも憚られるような不気味さがあり、頭を持ち上げて舌を出している蛇に見立てた別名「ヘビクサ」もある。
・釣り糸に見立てられるのは苞葉の先端が細くなったもので、最長60センチにも達し、自分の葉や他物に絡まる。花言葉も浦島太郎にちなんだ「不在の友を想う」「懐古」「回想」など。
・根は扁平した球形で上部に多数のヒゲ根があり、周辺には小芋を生じる。茎の汁液、根、果実には蓚酸カルシウムを含み、触れると湿疹やかぶれを、誤飲すれば口内炎、嘔吐、下痢、胃炎を引き起こすが、民間療法では球茎のおろし汁をオデキの吸出しに使う。
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なんだ…死んだりはしないじゃない…。
私は胸を撫で下ろした。
それにしても、なんだか不気味な草だ。
だけど花言葉は、「不在の友を想う」「懐古」「回想」などというセンチメンタルなもので、不思議だった。
アレ…?
「触れると湿疹やかぶれ…」
その瞬間、まるでドラえもんのタイムマシンに乗って時空を猛スピードで過去に遡っていくような感覚で、私の脳裏にいくつかの場面が浮かんできた。
幼い私が布団の中で「痒いよ〜痒いよ〜」と泣いている。
「頭の地肌までいっぱい湿疹ができている」
枕元で、軟膏を手にした困り顔の母がつぶやく。
そして急に場面は変わり、砂浜を母と手を繋いで歩いている。
波の音が聞こえる。
母以外に大人の女性が2人。
1人はまるで神子のような装束で、髪は白髪混じりだった。
もう1人は?見覚えのある顔だけど…誰だろう?
神子のような格好の年配の女性が言う。
「絶対に海の方を振り返ってはいけませんよ」
その言葉通りに、全員が振り返る事なく、砂浜の向こうにある雑草の生い茂った小道を目指して、黙々と歩いている。
なんだか非現実的だけど、これは絶対に夢ではなく、実際にあった出来事の記憶な気がしてならなかった。
第8話に続く。
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