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vol.17 姿勢と生産性の意外な関係性

健康と病気の間にある症状を見極めていくことの重要性

原因がはっきりわからないけれど、なんとなく体調が悪い。このような状態を「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と言います。

近年になり社会的にも知られるようになってきたPMS(月経前症候群/Premenstrual Syndrome)による、女性特有の健康疾患や更年期といったような問題が、この不定愁訴に含まれます。更年期は、今や女性だけではなく中年男性にも多くそのような症状が現れ始めていると言います。また、不定愁訴による日本の経済損失は約7000億にも及ぶとされています。病気と認定されていなくても、会社や生活でのパフォーマンスが低下するような腰痛や偏頭痛なども不定愁訴に含まれますが、このような症状に対し根治療法としてのアプローチを、私のようなトレーナーが今後は積極的に取り組まないとならないと考えています。

姿勢と生産性の関係性について

遺伝的な要因や個体差はありますが、骨格の構造上、効率が良いとされる姿勢があります。そこから逸脱した姿勢を「不良姿勢」という表現をしますが、反り腰、猫背、ストレートネック、スウェーバックなど色々なタイプがあります。

姿勢を治したいと思っている方は多いかもしれませんが、そこにしっかりと向き合って改善しようとしている方はそう多くはありません。その理由の一つとして、姿勢はあくまで「見た目の問題」いわゆる審美的なものとして捉えられていることが大きな理由ではないでしょうか。

営業や接客の職業でものすごく姿勢が悪かったりするとイメージが悪いので影響はありそうですが、デスクワーク中心の職種では姿勢は関係ないと思われがちです。ですが、姿勢による筋肉や内臓の状態の変化によって、情動側面に影響があるという研究結果が報告されています。

Do slumped and upright postures affect stress responses? A randomized trial  
Shwetha Nair et al. Health Psychol. 2015 Jun.

姿勢が感情に影響する

この研究試験は、直立姿勢にコントロールされたグループとうつ向き姿勢にコントロールされたグループに分けて、様々な課題に取り組んでもらうというものです。

参加者は、気分、自尊心、社会的ストレス発話課題、読書、知覚的脅威などを測定するテストを受けています。その結果、どのような結果になったか?

直立姿勢に保たれたグループ
⚫︎自尊心が高い
⚫︎気分が良い
⚫︎恐怖心が少ない
⚫︎発話速度が上昇する
⚫︎内向的思考を低下させる

うつ向けに保たれたグループ
⚫︎自尊心が低い
⚫︎ストレス値が高い
⚫︎発話における否定的感情の単語、一人称単数代名詞を多く使う

このような結果が、研究結果として発表されています。

そして、私も、日々、トレーナー活動で関わる方々の姿勢とマインドの関係性について、多々、研究結果と同じようなことを感じていました。

姿勢は単なる見た目の問題ではなく、また、関節の負担を増やしてしまうという認識だけでは不十分だと見解をもっと社会的にも改めていかないとならないと考えています。

不良姿勢における自尊心の低下、ネガティブな言動が多くなる、発話速度などに影響があるという事実。
ビジネスパーソンの方々は、特に、zoomでの会議、営業先での交渉、そして社内でのコミュニケーションにおいて、そのような場面において、姿勢による影響が多々起きている可能性がとても高いと私は推察をしています。

働き過ぎの状態の時は、自分の姿勢などに気を配ることもあまりないかもしれません。けれども、このような積み重ねが、生産性へと大きな影響を与えていることは計り知れません。


生産性の向上とは、一人ひとりの創造性を引き出すこと
それをトレーニングから、アプローチすることの重要性

生産性とは−
究極的には、それぞれの創造性を発揮すること。それぞれのクリエイティビティ能力によって、自分や周りを高めていく、より質の高い仕事をしていく、キャリアを積み重ねていく上でも、非常に重要なことだと思います。

創造性に、もしも、自らの“姿勢”が影響していたら?
その姿勢を意識し、科学的に正しい方法で治していくことの方が、どれだけ自分にも、周りにも、有益で、ポジティブであると思いませんか?

姿勢? そんな簡単なことで? と思うかもしれません。
でも、それは、トレーナー側にとっても、とても専門性を必要とする、一人ひとりの特性を身体的に見極める能力が求められます。
単に、一律的に治すことではなく、これまでの連載でもお伝えしてきたように、一人ひとり状況を見極めるという、非常に複雑で、繊細な問題が絡んでいます。経験値と確かな理論が最も必要とされるのです。

たかが姿勢、されど、姿勢。

このように考えていくと、不定愁訴実という現代の社会では未解決の多くの問題によって、一人ひとりの価値であるポテンシャルを引き出せていない状態になっているのかもしれません。これは、経済的にも、社会的にも、大きな機会損失であることは、間違いない。

ですから、科学的に正しいトレーニングによって未病に取り組む人が一人でも多く増えていくことを願っていますし、私自身の業界も、もっとそのように変えていきたいと思いますし、自らの社会的な活動としても、生産性の向上の問題に対して、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。

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