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理学療法士が高齢社会における「健康」を再定義する

こんにちは。
私は、回復期リハビリテーション病院というリハビリ専門病院で、主に「脳」の疾患の患者さんのリハビリを担当しています。

先日、ある偉い方に「高齢者のリハビリって何なん?」「やって元に戻るん?」「高齢者の社会復帰って?」と酷い事を言われました。ただ、その時に、上手く言い返せなかったんですよね。。。

この時の恨み節(⇦これは自分に対して)を、記事にします。
高齢社会では、そもそも「健康」というkey wordすら、よく再定義しておかなければ、「リハビリして復活する」といった思考が強調されかねないので。

従来の健康の定義は高齢者に当てはまるか?

「健康」を広辞苑で調べると、身体に悪いところがなく、すこやかなことである。とされ、すこやかとは、病がなくからだの丈夫なさまとされています。

何か病気の診断がついた場合(例えば、高血圧症)
もう、「健康」ではないのだろうか?
また、永続的な障害を持った場合、健康には戻れないのでしょうか?

有名なWHOが定めた、健康の定義とは?

1948年の世界保健機関(WHO)の世界保健機関憲章で定めた健康の定義とは「健康とは肉体的、精神的、並びに社会的に完全な良好状態にあり、単に疾病や病弱でないということだけでない」とされています。

WHOの定義が出される以前は、いかに身体を元に戻すか、延命できるかに焦点が当てられていたため、社会的な面が取り入れられたこの定義は世界的に広く受け入れられたようです(すでに約75年が経過)。


高齢社会における「健康」を考える

1950〜55年の日本の男性の平均寿命は61.6歳、女性は65.5歳

2020〜25年では男性の平均寿命は81.3歳、女性は89.2歳とされ、さらに延びていくことが想定されています。

高齢者は1つ以上の何らかの疾患を持っていることが多いですよね。

高血圧
糖尿病
慢性腎不全
高脂血症 など生活習慣病のようなものから

脊柱管狭窄症
変形性関節症
骨折の既往 など整形外科的な疾患


軽い脳卒中や心筋梗塞など
加齢に伴い増えてくる疾患を挙げればキリがありません。

しかしながら、多くの場合はそれらの疾患が日常生活の営みに大きな影響を与えていないという側面もあります。

高齢者にとっての健康は、病気の有無というよりは、いかに生活が維持できているかというフィルターを通して眺めると、よく見えるかもしれません。

また、病気は持っていたとしても、いかに生活の質を高められ自己実現していくかが大きな課題となっています。

リハビリテーションマインドには、「失われたものに囚われず、今ある機能や能力で、いかに人生を輝かせるか」という考えがあります。

その点を踏まえると、生活を評価したり、今ある機能、能力をさらに伸ばしていくリハビリテーション医療従事者が「高齢者の健康」のためにできることはたくさんありそうですね。

まとめ


・現在の高齢社会における健康観では、一昔前の、「全てが健康出なければ健康ではない」が通用しなくなった。

・何か疾患を持っていても、病気と共存しながら十分に生活できているかという視点が重要。

・失った機能を、再び使えるように再教育するというよりは、ある能力をしっかり生かして生活を輝かせるという考え方も必要。リハビリ従事者は高齢医療でできる事はもちろん多い。


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