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【感想文】皆川博子『結ぶ』

✒️ あらすじ

そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった──〈縫う(縫われる)〉行為を考察する語り手が、読む者を幻視の極北へと導く、類稀なる綺想の結晶ともいうべき表題作、寓話と折紙を介した叔母と甥の戯れを描く「水色の煙」のほか、初文庫化に際し、海の底のような部屋で夢想世界の完成を待ち続ける女の独白を綴る「薔薇密室」ほか4篇の単行本未収録作を加えた18篇を収める。解説=日下三蔵

東京創元社HPより

✒️ 感想

2021年12月22日 読了
お気に入り度 ★★★☆☆

 優美で優雅な皆川さんの短編集です。どれも深い湖の底のような昏さを孕みながら、それでいて妙な安心感のある不思議な作品が沢山詰め込まれています。特に好きなのは「湖底」「水族写真館」「川」「薔薇の骨」。タイトルだけ見てもシンプルながら美しいと感じますよね……。
 そして、前半の3つのタイトルには共通して《水》のモチーフがありますが、彼女の書く水というのは、奇麗なだけではなく、妖しげで恐ろしくて魅力的なのです。また、《薔薇》というのも、皆川さんがよく用いるモチーフでして、ダークで美しいのに棘があるというのは、彼女の文体を表すのにぴったりだと私も思ってしまいます。逆に、人気があって象徴的な薔薇を自分のものとして取り込めるのも、彼女の文才があってこそなのでしょう。

✒️ こんな人におすすめ

 幻想文学が好きという方はもちろん、テレビ番組の「世にも奇妙な物語」が好き、という方にオススメです。ちょっと不思議な、でも、どこか有り得そうでちょっぴり怖いストーリーが目白押し。
 夜、照明を少し暗くして、オシャレにストレートティーなんて飲みながら読みたい作品です。寝れなくならないように、デカフェで。

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