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本業コラムで最低賃金を取り上げた内容を執筆し、(執筆とか仰々しい)最低賃金は地域格差があるよね。程度の知識しかない私は、当然色々な文献を調べながら書いたわけだが、東洋経済オンラインとダイヤモンド・オンラインの意見が真っ二つに割れていて大変興味深い。
また、本業コラムは品行方正を大切にしているので(笑)ちょっとこちらで所感を。

最低賃金についてそこまで深く考えたことが無かった

私は今の仕事に就くまで、随分と長らくの間、時給制の仕事で働いてきたわけだが、高校短大とずっとアルバイトしていたコンビニの時給は、学生だから最低で当然だよね。くらいの感覚でいたし、時給が高い低いは思っても、地域で、職業で、働き方で時給が色々異なっていることを意識し始めたのは、皮肉にも月給制の今の仕事に就いてからである。

しかも、転職エージェントという、人様の給料を意識しないといけない仕事に就いたからであり、違う仕事だったら永久に最低賃金のことなんて考えなかったかもしれない。

おそらく一般人は私のような感覚の人が多いだろうし、給料が低い!もっと欲しい!と思うことがあっても、なぜ低いのか?という根本的原因まで探ることはしないだろう。会社がケチってるくらいにしか思わない(苦笑)

でもこの感覚が良くないというか、最低賃金に限ったことではないのだが、原因を考えたら絶対に選挙に行かなくてはならないと思うはず…というくらい、国が勝手に調整してしまっているわけだ。(←ここの話は労働基準法から遡らないといけなくなるので割愛)

「最低賃金全国一律にすべき」東洋経済オンラインの言い分

労働者目線で語っているのが東洋経済オンライン。

・世界的に見て地域別の最低賃金導入してる方がレア
・東京都と地方でどんどん広がり続ける賃金格差
・手取りは生活保護より低い水準になってしまう人もいる

大事なところ抜粋↓

-企業は、今までよりも高い賃金を支払わねば人材確保もままならず、最低賃金自体は、各地域の労働需給の指標である有効求人倍率や失業率ともほとんど相関を示していない。最低賃金を全国一律にしても、地方の雇用に影響するとは考えにくい。
最低賃金と企業経営の関係については、現状では労働配分率は伸びていないのだから、むしろ賃金を含めた物価上昇に結び付かないことのほうが問題ではなかろうか。

労働者としては東洋経済オンラインの肩を持ちたくなるところだが、個人的に最低賃金が一気に上昇したら一気にひっくり返る会社は確実に出てくると思っている。

まさに、前職の小売の会社は実質最低賃金のパートさん達で店を回している状態で、私が配属になっていた店舗は、従業員が13人いるうち、正社員が2名、契約社員が1名、残り10名がパートという状況だった。

10人のパートは全員最低賃金スタートであり、昇給は1年で数円上がるか上がらないか程度である。
そんなパートの皆さんの時給が一気に200円以上上がったら?
一部上場企業だったが、900億近い売上高があって純利益が数億とかいう会社であることを考えると………お察しである。

「最低賃金全国一律にすると地方が滅びる」ダイヤモンド・オンラインの言い分

最低賃金の一律化や最低賃金の大幅引き上げにネガティブな見解が多いのがダイヤモンド・オンライン。
先に私が言った、「最低賃金が一気に上昇したら一気にひっくり返る会社」がたくさん出てくる。という他にあれこれ掘り下げた内容を記載している。
Uber Eatsをヤミ労働市場の一つに挙げてくるのは中々だ。

そしてたった今、東洋経済オンラインとダイヤモンド・オンラインを統括したような記事を見つけた(笑)
ITmediaビジネスオンライン↓

とても良くまとまっていてわかりやすい記事で、東洋経済オンラインに鬼のように記事の連載を行っているデービッド・アトキンソン氏の華麗なる経歴と説得力にこれまた流されそうになるわけだが(笑)
大企業・中堅企業こそ「国の宝」だ」と言っている時点で、日本の会社のことあまり良くわかっていらっしゃらないのか?と思ってもみたり。

まぁこれから市場再編でプライム落ちする企業がボコボコ出てきて適正化されるわけですが…前職の一部上場企業はたぶんプライム落ち。

政府の施策

-最低賃金については、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、 「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。

加重平均とは何ぞや?と調べてみたら、素晴らしくわかりやすいサイトを見つけた。

政府は今のところ一律化ではなく、全国加重平均が1000円になるようにしたい。と言っている。しかも名目GDP※成長率にも配慮しつつ。と言っている。

※名目GDP:生産額を単純に足し、計算したもの
名目GDPは実際に市場で取引された価格を元に算出しているので物価変動の影響は調整されない

政府は「中小企業は日本という国にとって、宝でもなんでもありません。」と斬り捨てるアトキンソン氏とは異なり、日本の企業の大半を占める中小企業を何とかしないといけないと思っている様子で、「最低賃金・賃金引上げに向けた生産性向上等の支援」として、「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への生産性向上等の支援」を行っている。

具体的支援としては、業務改善助成金働き方改革推進支援センター働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)といういつもの「これやったらお金あげるから!」という内容。

国が支援しても、生産性が向上する気配はあまり見えないので、そうなってくるといよいよアトキンソン氏の言うことが正しいように思えてくる。

大企業が常に最低賃金以上を労働者に支払うべき

大企業ピンキリ問題がとてもネックになっているのではないかという気がしてならない。
そしてこの大企業、企業によっては派遣を大量に使っているので尚更質が悪い。
大企業が最低賃金で人材を雇用するのだから、同業の中小企業は「あの大企業がこの賃金なんだから、うちもこれでいいよね!」となるに決まっている。
日本を引っ張り上げるためにも、大企業には常に「あのくらい出さないと人は雇えないんだ」という賃金を攻めて欲しいのだ。

…ただ、これをやると、ずるい企業はすぐに海外の安い労働者を頼ろうとする(海外に拠点を移してしまう)ので、どうしたものか。

結果、全部自分に跳ね返ってくる

大量生産、大量消費を行うには小さくなりすぎた日本で、高度経済成長期のように、中卒の金の卵が一斉に工場で労働し、それなりな対価を貰えていたような時代に返ることもないだろう。

とても単純な話をすると、最低賃金以前に、自分の給料を上げたければ、会社の生産性を上げることが大事で、生産性を上げたければ、労働者個々の努力が必要になってくる。
その労働者個々の努力の質が変化の時を迎えているのに、末端の労働者はそれに気づかず高度経済成長期と同じような働き方を続けていることに矛盾を感じざるを得ない。

本業コラムにもやんわり書いたのだが、日本人は自分が関わっていることについても無関心すぎるというか、対峙しようとしない傾向が強いと感じる。
投票率の低さはその状況が最たるものとして表れているし、今直面していることと言えばコロナワクチンになるのだろうが、接種が進まないのはワクチン不足ではなく、ワクチンの副反応が怖くて打ちたくないとかでもなく、ワクチンに興味がない人が多いからである。

「最低賃金を引き上げたかったら、自分は何をすべきなのか?」

しんぶん赤旗を読む前に、少しは自分で考えてみたい。

※赤旗…共産党員でもなく、共産党支持者でもなく、皮肉です。

中小企業支援の抜本的強化と一体に最賃を引き上げることは、コロナ危機で落ち込んだ経済の立て直しに貢献します。最賃引き上げに向けた政府の中小企業助成金は20年度3次補正予算で14億円、21年度予算で11・9億円しかありません。年7000億円の国費を投入し、社会保険料の事業主負担を減免するなど中小企業支援を強めれば、3年程度で全国一律1500円に近づけることができます。政府の決断が決定的に重要です。

そんな財源どこにあるんだ。

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