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【R32:STORY】逆襲のロックンロール・21世紀音楽隊

Vo.&Gt.ロックスター中村貴志(なかむら・たかし)が主宰するロックンロールバンド、21世紀音楽隊。2009年に結成し、現在はBa.カズキ、Gt.Taka、ダンサー.山形侑子(やまがた・ゆうこ)、Dr.緑☆イトウ、Gt.ハッタンの第28期メンバーで活動している。彼らが音楽を続けてきた経緯と、今後の目標を聞いた。


夢を諦めきれず、21世紀音楽隊を結成

ロックスター中村は、演歌歌手の母親のもとに生まれた。子どものころはエレクトーンを習っており、バンドに目覚めたのは小学生のときだ。

「ちょうどエックスジャパンの時代だったので、最初はドラムをやってました。でも中学生になって、ギターがカッコいいと思うようになったんです。兄のギターをこっそり借りて、弾き始めました」。

学生時代は、軽音楽部でバンド活動に励み、オリジナル曲も作るようになった。「部活の先輩や顧問の悪口を歌にして、部室で歌ってました。『自分は絶対天下とってやるぜ』と、学生なら誰もが思うでしょうけど、本気で言ってました」。

卒業後は、バンドを作っては解散することを繰り返した。24歳のときに作ったバンドでは、とある音楽レーベルに所属。2008年には渋谷 CLUB QUATTROでワンマンライブを行ない、満員御礼となった。

「でも、そこがピークでしたね。だんだん集客が落ちて行って、メンバーの人間関係も悪くなって。そのころ自分はMCに力を入れて、楽しんでもらおうとしていましたが、他のメンバーから『もっと真面目なロックバンドがやりたいから辞めてくれ』と言われてしまいました」。

バンドを脱退した後、「このままでは終われない」と考え、09年に結成したのが21世紀音楽隊だ。

「ライブハウスに出るようなバンドって英語名が多いので、敢えて、数字と漢字を組み合わせた名前にしました。21世紀にはばたくロックバンド、21世紀のブレーメンの音楽隊、ってコンセプトです」。

ロゴは、知り合いのデザイナーに制作を依頼。「ユニークでユーモラスで特撮っぽい感じにしてほしい、とお願いしました」。

また、メンバーのキャラクターを立たせるため、それぞれにカラーを設定。ロックンロールのパーティバンドとして、スパンコールがついたジャケットを羽織るスタイルに行きついた。

「21世紀音楽隊で、前のバンドを超えないと、死ぬに死にきれません。どうすればいいのか、ずっと考え続けています」。

現在のメンバーが揃うまで

21世紀音楽隊は、結成から2023年夏までに、何度かのメンバー交代を行なってきた。スタジオ練習に参加したミュージシャンまで含めると、現在の体制は第28期となる。所属するメンバー全員を紹介することは困難だが、彼らが21世紀音楽隊に加入したきっかけを、幾つか紹介したい。

Ba.カズキが加入したのは、2010年ごろだ。

「僕は子どものころからギターやドラムをやってました。19歳のころに組んだバンドでベースを始めて、音楽レーベルに所属して、中村と知り合ったんです。レーベルメイトとして、彼のバンドと対バンしたこともあります」。

当時のカズキにとって、中村は眩しい存在だった。

「彼がクアトロでワンマンをしたとき、僕はカメラ係でした。演奏はもちろん喋りが面白くて、会場を大いに沸かせていて、『すごいなぁ。人気者だなぁ』と思っていました」。

中村がバンドを脱退してしまった後、交流は途絶えた。だが数年経ち、カズキのバンドが解散したころ、久しぶりに連絡があった。

そのときを振り返って、中村は「21世紀音楽隊のベースが抜けてしまって、困っていたんです。カズキくんがめっちゃ上手いのは知っていて、前にサポート演奏を頼んだことがあったくらいですが、タイミングが合わなくて断られてしまっていました。リベンジも兼ねて、『うちで弾いてほしい』と口説きに行きました」。

同じころ、カズキは、他のバンドにも誘われていた。

「ビジュアル系のバンドでベースを弾かないか、って。でも、そのバンドのライブ映像を見せてもらったあと、思いついた改善点を100個くらい送ったら、『そういうのはいらない』って言われちゃったんです」。

一方の中村は、カズキに「どんどん口を出してくれ」と言った。

「渋谷でカズキくんと飲みながら、『バンドのプロデューサーになってほしい』と伝えました。僕らは、もっと上に行きたいので、直すべきところを教えてくれる人がいるなんて、ラッキーじゃないですか」。

中村とはwin-winの関係を築けそうだと判断したカズキは、21世紀音楽隊に加入。現在も他のバンドで演奏したり、スタジオミュージシャンとして仕事をしたりすることもあるが、軸足は21世紀音楽隊に置いている。

「他の現場では静かに座って弾くこともあるけど、ここでは手元すら見ないで、バーンとやっちゃってます。音楽性よりエンタメ性、弾くより踊ることが大事なので」。

そんな彼らの代名詞ともいえるダンスの鍵を握るのは、ダンサーの山形侑子(やまがた・ゆうこ)。彼女が加入したのは、2018年ごろだ。

学生時代からダンス一筋に生きてきた山形は、ダンスを職業とし、現在はスポーツジムのインストラクターとしても人気を博している。趣味を通じて彼女と知り合った中村は、数年前から振り付け指導を依頼していた。

正式なメンバーとして誘ったきっかけは、ライブ直前のトラブルだった。

「我々史上最大の箱を抑えて、主催イベントを企画していたんですが、突然メンバーが脱退してしまったんです。ステージ上の人数が少なくなってしまい、間延びする恐れがあったので、急遽、侑子さんに『出演してほしい』とお願いしました」。

依頼を受けた侑子は、大いに驚いたが、二つ返事で引き受けた。

「21世紀音楽隊はパフォーマンスを重視しているバンドだと、中村さんから聞いていました。『ちょっとくらい演奏が下手でも、目の前のお客さんに面白いと思ってもらえるステージを作るのが最優先だ』と。そのコンセプトは、ダンサーとしての私の本懐に近いところがあると思いました」。

とはいえ、初めてのライブでは、満足のいくパフォーマンスができなかった。

「ダンスの舞台と違って、足元にコードや機材があって、思うように動けませんでした。自分の認識が甘かったのもあって、悔しい結果になりました」。

終演後、彼女は「もう一回ライブに出たい」と中村に伝えた。

「やったぜ!と思いましたね」と、中村は笑う。「世の中、ストイックなバンドが多いので、ダンスやアクションがあるだけで、会場の雰囲気が変わるんですよ。侑子さんの申し出は、渡りに舟でした」。

Gt.Takaが加入したのは、それからまもなくのことだ。

「侑子さんからの繋がりで21世紀音楽隊を知って、ライブを見に行ったんです。すごく面白くて、僕も一緒にやりたくなって、中村さんに声をかけました」。

Takaがギターを始めたのは、小学2年生のときだ。

「親父のフォークギターに興味を持って、コードも知らない、弾こうとしても指が届かないところから始めました。父はエリック・クラプトンが好きだったんです。中学生になってすぐ、自分のエレキを買ってもらって、友達とバンドを組んでいました」。

その後、10年ほどギターから離れた時期があったが、数年前に再開。

「やっぱりギターが弾きたいなって思ったんです。スクールに通い始めて、気が付いたら、教わる側から教える側になっていました」。

Takaから「加入したい」と申し出を受けた中村は、「彼のようなギタリストが加入してくれたら、バンドとして戦闘力が上がると思いました。ギターが3人いるバンドっていうのも、周りにいませんでしたし」。

俺たちの逆襲はこれからだ

個性豊かなメンバー達が、それぞれの理由で集まり、現体制が整ったのは2020年の2月。いざ活動を本格化させようとしたとき、コロナ禍が世界を襲ったが、「ロックンロールへの溢れだすリビドーは止められませんでした」と中村は語る。

対面でのライブができなくなったことを受け、YouTubeチャンネルを開設。精力的に動画投稿を行ない、みるみるうちに登録者数を増やしていった。

「こうなったら、コロナ禍の申し子になってやるぞ、くらいの勢いでした」。

オリジナル楽曲のMVやライブ映像、『新曲69曲配信チャレンジ』などの音楽的な動画だけでなく、『ライブハウス楽屋あるある』や『ロックンロールヨガ』、『ロックンロール道場破り』などバラエティ豊かな動画を制作。23年夏現在も、毎週金曜日に、新たな動画を投稿している。

「21世紀音楽隊に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度、YouTubeで僕らの動画を見てください。一昔前は『ライブに来てください』だったんでしょうけど、僕は今、沢山の方にバンドを知って頂くには、YouTubeが効果的だと思ってます」。

一方で、自粛要請が緩和されるに従って、ライブ活動も再開。現在は2ヶ月に3本ほどのペースでライブハウスに出演している。

さらに静岡県で開催された土肥サマーフェスティバル海上花火大会2023や、各地の音楽祭など、野外イベントにも出演中だ。

カズキは「パフォーマンスはもちろん、中村のMCは最高に面白いです。どんな現場に行っても、絶対に負けない自信があります」。

23年11月11日には、Live House GIGS Yokohama Tsurumiで、4年ぶりの合同企画イベントを行う。

「地元の仲間たちとの合同企画です。みんなコロナ禍で活動できてなかったんで、同窓会じゃないけど、リスタートできるようなイベントになればいいと思いました。鶴見のギグスは僕らのホームで、無観客ライブの収録とかもしていました。久しぶりに有観客でライブができるので、お客さんとの再会も楽しみです」。

5年後、10年後の目標はありますか?と聞いてみた。

「YouTubeを始めたことで、新しい世界が見えました。ダンスとロックの融合っていうのは形になってきたので、これから、もっとブラッシュアップしていきたいです。自分たちにしかできないバンドの魅せ方を考え続けて、ちょっとでも有名になりたいですね」。

会場を満員にして、オーディエンスに魔法をかけれるロックバンドでありたい、と語る。

さらにロックスター中村は「個人的な目標として、若いころからリスペクトしている布袋寅泰さんと対バンしたいです。実は昔、彼が好きすぎて、彼がライブの打ち上げをしている店に電話をかけたことがあるんですよ。『その節はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした』と、直接、ご本人に謝罪できる日までがんばります」。

彼らを支えているものは、反骨精神だ。

「21世紀音楽隊を結成してから10年以上経ちました。音楽活動を始めてから考えれば、随分長いこと、アングラでもがいています。悪運尽きて、バンドを畳むべきかなと思った局面もいっぱいありました。それでも、まだ諦められません。いつか俺たちが日の目を浴びたとき、生きる意味を肯定されるアングラバンドマンもいると思います」。

テレビをつければネガティブなニュースばかりの昨今、芸能界にもコンプライアンスの徹底が求められ、破天荒なロックバンドの姿は影をひそめつつある。そんななかで、21世紀音楽隊は、『最先端の古き良き昭和』を感じさせてくれる。

「綺麗にまとまるのが世の中のトレンドなのは仕方ないけど、時代に取り残された、アングラでディープに進化せずに深化してる俺たちを、ぜひ見つけてほしいですね」。

彼らは、「自分たちの音楽で誰かの人生を変えられるとは思わない」と語る。

「ただ『天下を取りたいと夢見て、何十年も音楽を続けて、現実はこんなもんだけど、まだ続けてる』だけです。リアルなアングラにロックバンドを続けた人たちの末路がここにあります。『バンドやりたい』と思ってる若い人は、ぜひ俺たちのYouTubeを見てください。『こんなんでもいいから音楽やってみよう』と思うか、『こうはなりたくないから、まっとうな会社員とか公務員を目指そう』と思われるかは、分かりませんが」。

独自のスタイルを貫く彼らの行く先を、見守りたい。

text:Momiji

INFORMATION

2023.11.11(Sat) open 15:00 / start 15:30
べんべー&21世紀音楽隊合同企画 GIG!GIG!GIG!

[会場] GIGS Yokohama Tsurumi(神奈川県横浜市鶴見区豊岡町24-24
[料金] 前売¥2,000(+1drink) / 当日¥2,500(+1drink)
[出演] べんべー・21世紀音楽隊・The RIGHTS・COHGUN・浪漫☆喫茶・チャーリィゴードン・THE CAPTAIN・ROTTENS and more…

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ライブ会場にて、CDとステッカーを販売中

物販は、CDとステッカー。一枚500円の手作りCD。ライブ会場限定販売。ステッカーは一枚200円で、厄除けになる。Tシャツは、たまにリクエストもらうけど。色かたよっちゃうし、動員ないバンドが売ってると在庫が辛い。レーベル時代に大量にグッズ作らされて在庫のトラウマが。(byロックスター中村)

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