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魚皮のはなし

第二回は、「魚の皮」についてお話していきます。魚の皮で衣服を作る…?できるの?と思うかもしれませんが、特に樺太アイヌの間で重宝されていたんです。


チェㇷ゚ケㇾ/チェㇷ゚ケㇼ(魚皮靴)

魚皮でできた靴です。魚皮は、防水性にとても優れていて現代のゴム長靴のような感じです。しかし、防寒性があまりないことに加え、滑りやすいのでので冬は、前回紹介した鹿皮の靴を履いていたそうです。また、サハリンの方では、足首から上も覆われる、長靴タイプも作られていました。

材料は、オイシル(ほっちゃれ)と呼ばれる産卵後の大きな鮭が重宝されていました。オイシルは、皮が厚くなっているのでより丈夫なものができます。大人用の靴を一足作るのに、鮭が3~4匹必要だったそうです。


作り方


アイヌ生活文化再現マニュアルより

まず、はぎとった鮭の皮を水できれいに洗って、壁などにかけて4~5日の間乾燥させます。そして、靴を作るタイミングでぬるま湯に着けて、柔らかく戻します。(干しシイタケで出しとるときみたい)

アイヌ生活文化再現マニュアルより

背びれが足裏側、背びれがかかと側に来るように敷きます。その上に足を置いて、足を包むように折り曲げ、縫い合わせます。

他の魚皮の衣服

靴をメインで紹介していますが、他にチェㇷ゚ウㇽ (魚皮衣 ぎょひい)もあります。鮭だけでなく、カラフトマスやイトウ、海の魚も材料にしていました。主に樺太アイヌが着ていたもので、裾が広く和服よりも、洋服に近い形をしています。特に女性が着用していたそうです。
魚皮衣は数十匹の魚の皮をはぎ合わせて作られます。背びれの部分は切り抜いて、穴を埋めるために、文様を切り抜いた魚の皮を縫い付けていました。


魚の皮って臭くないのか

私は講義などで実際に魚皮衣を触ったり、においを嗅いでみたりしたことがあります。触り心地は、なんというかレジャーシートみたいな感じで、鱗がある分少しざらざらしました。においは、無臭…
魚だから生臭いのかなとか思い込んでいましたが、全然そんなことはありませんでした。しっかり乾燥させてるからかな?


参考文献とまとめ

今回は魚の皮について紹介しました!実物は大阪にある「国立民族学博物館」や北海道白老町にある「国立アイヌ民族博物館」などで見ることがで着ます。特に「国立アイヌ民族博物館」には、実際に魚皮靴をどうやって組み立てるのか触って学べる展示なんかもあるのでぜひ行ってみてください!

【参考文献】
公益財団法人アイヌ民族文化財団 アイヌ生活文化再現マニュアル 縫う【チェプケリ・ユクケリ・トッカリケリ】
「アイヌの民具」 萱野茂 すずさわ書店 1978
「アイヌ文化史事典」 関根達人ほか 吉川弘文館 2022
「アイヌ文化の基礎知識」 アイヌ民族博物館 草風館 2018




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