藍沢 羽衣

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怪談師には憑いている(第四章)

  第四章 怪談はついてくる 「ぼくはこの町でとあるイベントがあって招待されたんですよ。お二人は取材で?」 「え、ええ。オカルト記事の取材で、民俗学について色々調べてるんです」  今度はわたしが硬直してしまったので、横から先輩が助け船を出した。 「そうなんですね! この町にも色んな伝承がありますから面白いですよ。よければご案内しましょうか? 興味深いものが見られると思いますよ」  朽木の件があったからだろうか。  整った顔に浮かぶ爽やかな笑みは数日前と変わらないのに、どこ

    • 怪談師には憑いている(第三章)

      第三章 怪談師には憑いている   『クッチー朽木が死んだ』  先輩から電話がかかってきたのは、そろそろ寝ようかと思っていた二十三時過ぎのことだった。 「は? どういうこと?」 『生配信中の事故らしい。ネットニュースを眺めてたら流れてきた。さっきメールでアーカイブ動画のURLを追った。見られるか?』  スマホをスピーカーにして、すぐにタブレットの電源を入れた。  メールに貼られているリンクをタップする。 『はーいどーもー。怪談師兼心霊スポット探検家のクッチー朽木です』  ア

      • 怪談師には憑いている(第二章)

         第二章 怪談は生きている 「いやあ、ラッキーだったな。おれ、このライブのチケット争奪戦に負けてさ。柳瀬さまさまだ」  七種先輩は鼻歌なんて歌って、近年まれにみる上機嫌だ。 「そんな大げさな」 「大げさなわけあるか。こういう箱は入れる人数少ないしさ。まして怪談王子を間近で見られると来たらチケットなんて瞬殺ってもんだ」  そういうものなのだろうか。  現在、わたしと先輩は渋谷のとあるライブハウスに来ている。  ――よかったらこれどうぞ、ペットボトルのお礼です。  怪談蒐集の帰

        • 怪談師には憑いている(第一章)

          (あらすじ) 柳瀬恵はフリーライターの二十代女性。柳瀬は同業者の七種から、とある企画に参加しないかと誘われる。それは人気の怪談師を特集するムックで、柳瀬は『怪談王子』とも呼ばれるイケメン怪談師、蓮見才人の密着インタビュー記事を任される。 密着生活の中で、蓮見は新興宗教団体『いずなの使徒』の代表者である瑜伽(ヨギ)の息子であり、才人や教団に不利な言動をする人物が続々と不幸な目に遭っていると知る柳瀬。蓮見家は、飯綱(いずな)と呼ばれる東北地方固有の呪物を使役する一族だったのだ。

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