世界は広い。けど遠くない。
「今の言葉、メモしてもいい?」
「え…?」
「だから、世界は広いけど遠くない、って言葉。』
友人とカフェでお茶をしながら、おしゃべりを楽しんでいた私は、突然投げかけられた言葉の意味が一瞬わからず、思わず聞き返してしまった。
「大切にしたい言葉は、忘れないようにきちんとメモしておかなくちゃね。」
何気なく自分の口から発せられたその言葉を、友人がメモしている間、私はなんだか気恥ずかしいような申し訳ないような気持ちになったことを覚えている。
2021年の秋、だった。
場所は、中国のシリコンバレー、中国のドローンの基地とも呼ばれる、中国の南東部、広東省に位置する中国4大都市の一つ、深圳(しんせん)だ。
深圳と聞いて、ああ、と思い当たる人は、実際に行ったことがあるか、もしくはよほどの博識ではなかろうか。
私は夫の仕事の都合で2019年4月から2022年の3月まで中国・深圳市で生活をしていた。メンバーは夫、2人の子供(4歳2歳)と私の4人だ。
最初赴任地が決まったと報告を受けた時の私と夫の電話での会話が以下だ。
夫「場所が決まったよ。深圳。」
私「…?え、どこ?」
夫「中国の都市。香港の隣だよ。」
私「中国!???ホンコン!?…だからそれどこ…?」
無知でごめんなさい。実際なかなか分からない…よね?汗
実際に行ってみると、深圳は私がもっていた中国のイメージとは随分かけ離れた、
とにかくでっかいビルが建ち並んで、
スマホ一つで30分以内でタピオカミルクティーを届けてくれる、スーパーハイテクシティーだった!!
(なんと私がいたころから4年経った今はドローンが注文品を届けてくれるらしい…!)
そこでの生活は、初めての体験、経験ばかりのなんとも刺激的な3年間だった。
ここで突然!
中国で起こった思い出深い出来事3選〜!!
第3位!
息子氏、アレルギーになる。
渡航して二ヶ月経ったころ、2歳の息子の全身に蕁麻疹が…!!慌てて病院をきき、日本人の医者がいるクリニックにかかったら、アレルギー検査をされた。
結果、大豆や塩、ラクダなどにアレルギーがあるとのこと。
え!らくだ?!(今思うと塩も地味にジワる…。塩て…何たべて生きていけば?)
そしてもちろん、高額の治療に通うことを、勧められる。
第2位!!
息子氏、マンホールに落ちる。
これね、うそだと思うでしょ?ほんとに落ちるのよ。
息子の場合は、下水道につながるマンホールではなく、ごく浅い(地下50センチくらい)点検用のものだったので、ぎゃー!となって、あれ?引っかかってる・・?落ちてない!よ、よかったあああああああー!となったのでした。
第1位!!!!!
電車に乗った途端、老略男女問わず誰でもすぐに、子連れ(3歳5歳と私)に席を譲ってくれる。
流れを無視して、突然良いことでごめんなさい。
でもこれが本当にすごいの。
さっと立つ。とても自然。
バスからベビーカーを下ろそうとしていると、さっと手を添えて下ろすのを手伝ってくれる。そのまま目も合わさず去っていったイケメンのお兄さん…。
日本だったら、「子連れ様」とか「ベビーカーが邪魔で迷惑」とか言われてしまいそうなところを、何事もなかったかのように、
中国では赤ちゃんや小さい子のことを『宝宝(バオバオ)』と言い、私の子供たちも至る所で「好可愛的宝宝〜♡(可愛い赤ちゃん♡)」と可愛がってもらった。
一人っ子政策が長かった背景からか、小さい子は宝、という感覚が根強いのかもしれない。ともかくこれが中国に行って一番の驚きだった。
イメージが変わったと言う点ではもう一つ。
ここで突然クイズです。
A.まだ乗りたいから。
中国で公園で遊んでいる時に、ブランコに乗りたくて並んでいても、いつまで経っても変わってもらえなかったので、うちの子供たちも必死に中国語を覚えました。
「可以換ま?(代わってもらえる?)」と何度も必死に訴えます。
基本的には、無視されます。笑
しかし何度も言い続けると、ブランコに乗っている男の子のそばに居た女性(おそらく男の子を面倒見ているお手伝いさん)が、その子に
お手伝いさん「乗りたいみたいだけどどうする?」と聞きます。
男の子が「まだ乗りたい。」と言います。
おばさん「まだ乗りたいんだってさ〜」
これで終わりです。
ね?まだ乗りたいのよ。それ以上でもそれ以下でも無い。
まだ乗りたいなら仕方ないよね。
第2問。
A.待っている子に悪いから。
待っている人がいるのに、ずっと(自分の子供が)乗り続けるのは居心地が悪いから。
直ぐに変わらなかったら周りの人にどう思われるか分からないから。
みんな、色々な理由があると思う。
でもそこに自分の子供の気持ちを考えている人がどのくらいいるのかな。正直私は、考えられていなかった。以前は周りの人のことを優先するように声をかけていた。
「人に迷惑をかけないようにしようね。」
「譲れてえらいね」
「人に優しくしようね」
日本で「みんなの事を考えましょう。」という時、その『みんな』の中に『自分』を入れて考えている人がどれくらいいるだろうか。
まず自分はどうしたいのか。
そして相手はどう思っているのか。
ブランコに乗っていた男の子も、しばらく乗っていたら興味が別に移ったのか、それとも譲ってくれたのか、別の場所に走って行ってしまった。
うちの子供たちは、待つこともできるようになったし
自分から「代わってよ!」と言えるようにもなって、少し成長を感じることができた。(少しだよ。)
もちろん中国人日本人に限らず個人差はあると思うし、これは私個人の感じたことだけど…こういう側面もあるのかなと思う。
中国人、いい人いっぱい居た。
そりゃそうよ。日本にだっていい人もそうじゃ無い人もいっぱいいる。
ただ、中国に関しては日本にいると『なぜ?』と思うほど、ネガティブな情報ばかりが、耳から目からどんどん入ってくる。
それは少し悲しい。
何にも知らない人が、人から聞いたことやテレビやネットからの情報だけで悪く言うのは間違っていると思う。
私も3年住んでいただけで、何か知った顔をできるわけではないけれど、情報をそのまま鵜呑みにしてはいけないと言うことだけは知ることができた。それが財産。
中国で過ごした3年間は、私の今までの人生考え方や生き方を大きく変える、きっかけとなった。
自分が信じていること
当たり前だと思っていることも
事実とは異なる場合があるということ。
中国に住んでいる間、お隣の香港やマカオ、
(金太マカオにつく〜♪のイメージしかなかった。とりあえず一旦謝るね、マカオ)
日本から行くよりは近いということで、ベトナムやタイにも旅行に出かけた。
その後新型コロナウイルスが広がり、国外にはなかなか行きづらくなってしまったので、その後は中国国内をたくさん旅行した。
北京で万里の長城や天安門広場に行ったり
西安で兵馬用のお仲間になったり
成都で赤ちゃんパンダを見たり…。
それぞれいろんなことがあって美味しいものがあって、本当に面白かった。
家族4人で乗り越えた、いや楽しみ尽くした3年間は、私たちにとってかけがえの無い経験となった。
「世界は広い。けど遠くない。」
誰もが自分の足で色々な国を旅し
その国の良いところも、素敵なところも
自分たちにはない文化や、考え方も
みんなみんなひっくるめてお互いを認め合えたら…
広い世界はもっと近く
人々の心はもっともっと近くなって
平和な世界になっていくんじゃないかな。
世界で起きている争いは
だいたい自分の信念に反する誰かのことを否定する事から始まっている気がする。
世界平和なんて言うのは気が引けるって言う人もいる。わかるよ。なんかひとりカッコつけてる感じがするし、偽善者っぽいもんね。
でもみんなが世界の平和を願うようになって
その気持ちで生きていけば
一歩ずつだけど、そこに近づいていけるような気もする。
だから私はあえて言おう。
未来を生きる、子どもたちや、年老いた自分(老後が幸せじゃ無いなんてイヤヨ〜)
世界のみんなが幸せな世の中に。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
玉木 しき
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