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いまこの世界の片隅でリコメンドするチャリティショップのお話

チャリティショップとは

ツアーなどでイギリスを訪れた人はあまり気づかないかもしれませんが、留学などでしばらくイギリスに住んだことがある人は、チャリティが身近であることをご存知かなと思います。イギリスはチャリティの国。多くのチャリティ団体があり、人々も小さい頃から当たり前のようにチャリティ活動を行っています。

最近では100歳の退役軍人トム・ムーアさんが40億円相当の寄付金を集めるチャリティ活動を行い話題になりました。

そしてチャリティ団体の活動のベースとして、チャリティショップがあります。チャリティショップは、基本的には市民が寄付をした商品を、ボランティアが販売することにより得た収益で、さまざまな目的のチャリティに利用します。70年以上の歴史を持つイギリスを始め、ヨーロッパやアメリカ、韓国など、世界各地に同じようなシステムのお店があり市民生活に貢献しています。

ーイギリスのチャリティショップのシステム(ざっくり)

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チャリティショップは、ローカルソサエティの人々の寄付によって成り立っています。チャリティ団体が運営し、自治体や国のサポートがあります。免税や出店条件などの優遇により、それぞれの街のハイストリート(目抜き通り)にチャリティショップを出すことができます。そして寄付によって得た収益から経費を差し引き、ローカルなチャリティや個別の目的のチャリティへ配分されます。ちなみに2018年−19年のOxfam GBの総収入は4億3,410万ポンド=日本円で約585億だそうです。(Oxfam Annual Reportより)もちろんショップの売上だけではありませんが、すごい金額ですよね。

シチズン(市民)の役割
ボランティア(スタッフ)=カスタマー(購買者)=ドネイター(寄付者)

市民の役割はそれぞれ重なります。ボランティア(スタッフ)が寄付したり、買い物をすることもあるからです。またチャリティ団体から支援をうける受益者も含まれます。そして各ショップにはマネージャーとして有給で働いているスタッフもいます。

ーどんなチャリティショップがあるの?
私がチャリティショップの存在を知ったのは、15年ほど前。実際に訪れたのが11年前。そこから渡英するたびにチャリティショップ巡りをしています。例えば、同じチャリティショップでも各地域で特色があり、品揃えも価格もかなり違います。ファッションデザイナーやセレブとのコラボレーションによるハイセンスな服を揃えているお店、雑貨が多いお店、本とCDやレコード専門のお店。そして様々な人種や立場の人たちがスタッフとしてボランティアをしています。ロンドンのど真ん中、メリルボーンのOxfam Books & Musicでお話したスタッフは香港からの留学生でした。また、ウェールズの古本の街ヘイ・オン・ワイのOxfamでは20年以上もボランティアをしているマダムに会いました。そんなみなさんとお話しているだけでも楽しくて、チャリティショップに通いたくなります。

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 ロンドン・メリルボーンのOxfam Books & Music。本やレコード、CDをメインに雑貨、フェアトレード商品なども置いてあります。

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こちらもメリルボーンにあるCancer Research UK。ブティックみたい。

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世界遺産の街バースのDorothy House Music & Books。チャリティショップラバーのお友達 @hahiu さんに教えてもらいました。こちらは普通の本屋さんみたいに見えます。

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洋服などはバックヤードでスチームアイロンをかけて店頭に並べられます。ヨーロッパのブランドが多く、とてもリーズナブルな金額で販売されています。日本のユニクロやMUJI(無印良品)はお高めかな。ハンドメイドなども売っています。

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本と音楽専門のチャリティショップ。アナログレコードや稀覯本、楽譜なども置いてあります。

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食器やカトラリーも多いです。日本で人気のスージー・クーパーがびっくりするようなお値段で置いてあったりします。

チャリティショップとそのミッション〈一例〉
Oxfam/世界の貧困をなくすための活動
Cancer Research UK/がん研究、がん患者とその家族への支援
British Heart Foundation/心臓病患者への支援、研究
British Red Cross/人道危機に対する支援
Octavia Foundation/社会的弱者を助ける活動
FARA/障害のある子どもと若者のための活動
Mary’s Living & Giving Boutique for Save the Children/世界の子ども支援
Princess Alice Hospice/患者とその家族をサポート
Shelter/劣悪な住環境生活者やホームレスを支援
Marie Curie Nurses/末期疾患とその家族をサポート
Dorothy House/バースやサマセットの末期患者とその家族をサポート

あちこちの街やストリートにショップがたくさんあります。同じストリート沿いに、同じ団体のチャリティショップが2軒並んでいることも少なくありません。
ローカルなチャリティショップはその地域に行かないとわからないので宝探し感があります。イングランドのヘレフォードで入ってみたチャリティブックショップは、ヘレフォードの慈善団体をサポートしていました。ローカルなチャリティショップが地域の人々の助けになっています。

ーいまこの世界の片隅でリコメンドする理由
新型コロナウィルスのパンデミックによって、世界の様相は変わりつつあります。
日本国内でも多くの人々が職を失い、店を失い、学費が払えなくなり、生活が立ち行かなる危機に直面しています。政府の対策は後手後手に回っていて、終息のめどはおろか、医療支援的にも、経済支援的にも、未だに光は見えていません。一律10万円給付に関しても、多くの筋違いな発言や提案が行われています。

政策に対する不満は数多くあるのですが、医療従事者への支援とエッセンシャルワーカーへのリスペクト、子どもたちの学びに対する権利、そして社会的弱者への救済に力を入れてほしい。
ポストコロナの時代には、苦しんでいる人たちや困っている人たちに確実に支援を届けるシステムやチャリティが、国家レベルで見直されると良いなと思っています。

日本でよくある大富豪がポンと寄付したり、セレブが行うチャリティではなく(もちろんそういう人たちも多くのチャリティに関わって欲しいと思いますが)、ローカルな一人ひとりが、小さく寄付したり、小さなお金や時間をボランティアで使うことで、身近なチャリティを可能にすることが出来ると思うのです。最初に紹介したトム・ムーアさんも庭を100往復する、という小さな行動で大きなチャリティを行っています。

現在の日本のNPOもすごく頑張っていますが、資金不足に苦しんでいます。市民の意識を変えていくことも必要なのかなと思いますが、自治体や国のサポートがなければ成り立たず、チャリティ自体も十分には行えないでしょう。一過性のものではなく、継続して支援するためには法整備も必要なのだと思います。
イギリスではチャリティ団体が新型コロナウィルスの影響のためチャリティショップの閉店を余儀なくされ、資金が集まらず通常の支援ができなくなりました。そこで政府がチャリティ団体に対し1,000億円相当の助成をしたとBBCニュースでも報道されています。

さすがイギリスですね。

ちなみに世界的チャリティ団体で日本でショップを展開しているところは今の所ないかなと思います。もしご存知でしたら教えてください!Oxfam Japanが2003年に活動を始め、チャリティショップも2軒ほどポップアップ的に運営していましたが、2018年に解散してしまいました。
そして日本独自にチャリティショップを謳うお店や団体があります。イギリスのチャリティショップのシステムとは違う部分も多いのですが、もっと増えれば素敵だなと思います。日本チャリティーショップ・ネットワークでは、メンバーシップを募ったり、広報活動にも力を入れているようです。私も一度講演会に参加して、事務局の皆さんととても有意義なお話をさせていただきました。興味のある方は、サイトをご覧になってみてください。

オンラインブックショップReading Mugでも今後チャリティブックショップとしての活動をはじめる予定です。2周年記念日くらいからかな。その際はまたご報告します。
そして私が魅了されたイギリスのチャリティショップ巡りの旅日記、書きました。こちらもぜひ読んでみてくださいね!



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