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レイ・ブラッドベリと萩尾望都の『ウは宇宙船のウ』の話

唐突ですが、SFってタイトルがいいですよね
『たったひとつの冴えたやりかた』
『幼年期の終り』
『アルジャーノンに花束を』
もちろん『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
――いろいろある中で、『ウは宇宙船のウ』もかなり好きなんです。
最近界隈で話題の『ウは宇宙ヤバいのウ!』もこのオマージュですからね!!
(ちなみに原題は"R is for Rocket"。「ロはロケットのロ」じゃなくて「ウは宇宙船のウ」という翻訳の妙もね…ありますよね…)

でも、あれ、私よく考えるとレイ・ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』は読んでなくね…? と思いまして、読みました。

何を隠そう、私かなり萩尾望都作品が好きでして…。
大人になってから『トーマの心臓』を読んで心臓をぶち抜かれて以来、「萩尾望都と名のつくものは全部もってこい!!」とばかりに読み漁りまして、その中に『ウは宇宙船のウ』もありました。
だからすっかり知っているつもりになってたんですけど、萩尾望都版の『ウは宇宙船のウ』とブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』は、構成されてる作品も違うんですね。
(補足しますと、萩尾望都の『ウは宇宙船のウ』は、ブラッドベリのいくつかの短編集から数編を抜粋して漫画化したコミック短編集です)

ブラッドベリに関していうと、SF読みとしてはもちろん通っているんですが、『火星年代記』は読み通すのに3トライくらい必要としたくらいには、やや苦労していて。
むしろSFというよりYAなのでは? と思うような『たんぽぽのお酒』が一番好きです。(版元品切れかも?晶文社さーん😭)

その点において、短編集『ウは宇宙船のウ』収録の短編「ウは宇宙船のウ」は、かなり青春小説の趣があるんですよね。
大好き

今回ブラッドベリの「ウは宇宙船のウ」を読んで、SFというにはあまりに地に足のついた(だって誰も宇宙には行かない)、少年たちの青春の1ページに、思わず天を仰ぐほど甘酸っぱい気持ちになり。
でもやっぱりそれは宇宙船にまつわる、架空の世界線の話だからこそ、そこに立ち上がる少年たちの純粋さを、そのままなんの疑義も挟まず、斜に構えず、受け取れるんだなあと、SFやファンタジーという"箱"の良さをしみじみと感じました。

そしてブラッドベリの原作を読むと、当然萩尾望都版も読みたくなるじゃないですか。
読みましたよ

こんなに忠実に再現していたのか??? とまずそこに驚きました。
セリフとかも結構まんま。
そして、萩尾望都の漫画で読んでいると、どの少年のどのセリフも、とっても萩尾望都らしくーー如何にも萩尾望都作品に出てくる少年たちのセリフっぽく、見えるんですよね。きみはユーリか?エーリクか???(すみません、ポーよりトーマ派なもので…)
でもそのセリフを書いたのはブラッドベリなわけで(まあ厳密にいうと大西尹明さんによる訳文を読んでいるのですが…)、なんというか、本当にこれは“奇跡のコラボ”なんだなあと。

萩尾望都版を読んでからブラッドベリの原作に戻ると、そこここに萩尾望都の描く少年たちがいる気がしてしまう。でも一方で、当然なんですが、ブラッドベリらしくもある。
そんなことある???
もう全作品漫画化していただきたくなってしまった。ちょっと苦手だった火星年代記も漫画だったらもっとすーっと読めるのかも……。


ということで、本当は「霧笛」の話もしたかったんですけど、全然そこに行きつかないので、今日は一旦このへんにします。
ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』でも、萩尾望都の『ウは宇宙船のウ』でも、結局やっぱり一番の名作は「霧笛」ですよね、なんなら夢にまで見た……ということを言いたかっただけなので、また気が向いたら書きます。(I)


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