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青春の胸騒ぎ feat.保土ヶ谷

「May be one more time 巻き戻そうよ、あの日のone night」

健太は持っていた100円玉を自動販売機に入れて、コンポタを買った。
バイト代は、こうして消えていくのだ。
池袋は、ハロウィンにクリスマスに浮つくイベントで埋め尽くされ
気温はそれらに呼応するように冷えてきた。
今日は、先輩から学祭実行委員会の仕事で大学に呼び出された。
こんな朝早くから何をしろって言うんだ。
こうやって理不尽に呼び出されるのも、
「自分の優しさ」が原因であるとわかっているじゃないか。
自分の不甲斐なさを、認めつつも
そこから抜け出せない自分がいた。
翌日は、同期と箱根ドライブだ。後少し頑張ろう。と自分に言い聞かせた。
かれこれ3日既読無視をしている琴音からのラインの通知を
横にスライドして、池袋の大学の門をくぐった。

琴音は大学の授業が終わると同時に、
池袋駅のコンコースを駆け抜けて、湘南新宿ラインに飛び乗った。
快速逗子行きは金曜日の夜にしては空いていて、
ボックス席にちらほらと空きが目立っていた。

保土ヶ谷駅に着いたのは、23時くらい。
いつもの待ち合わせは、駅前の公園だ。

「コンポタとおしるこあるけどどっちがいい?」
「コンポタがいい」
コンポタは暖かくて、芯から冷え切った体に効果抜群だった。
翔先輩の家は、駅から徒歩2分の好立地。高速道路の下なので
少し車の音が気になるが、それ以外は完璧だった。
早く暖かくなりたかった。

久しぶりの休みで心が浮ついていた。
るるぶの「箱根版」を開きながら、健太は絶品料理の妄想を膨らませていた。
食べることが好きな男子4人は、揃って遅刻した。
レンタカーは5時から借りていたが、結局出発したのは6時を少し過ぎてからだった。

「箱根で何する〜!」
「温泉でしょ〜!!」
「それはそう〜!!!!!当たり前や〜!!」
やっぱり愛情より友情なんやと、心から悟った。
レンタカーの車内は、少しタバコ臭かった。
保土ヶ谷ICは、朝日で照らされた料金所が
何となく、幻想的だった。
「あの人は今、何をしているのだろう」
そんなフレーズが、Bluetoothと繋いだ友人のプレイリストから流れてきたが
考えたくもなかったので運転に集中することにした。









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