#38 映画と私①〜THE FIRST SLAM DUNK〜
私は現在うつ病で療養中の40代男性だ。
昨晩Netflixで映画を見たのでその感想でも書いてみようと思う。
その映画は「THE FIRST SLAM DUNK」である。
私の大好きな漫画の一つである。
公開当時は劇場に見に行けなくてサブスク配信を楽しみに待っていたのだが最近ようやく配信開始されたようなので早速視聴した。
ここからは作品のネタバレを含むのでまだ未視聴の方はぜひ視聴してから読んでほしい。
まず初めに言っておきたい。
私はこの映画に大変満足している。とても面白かった。
いい映画だと思った。
視聴するまでなるべくネタバレを回避したかったのだがとりあえず宮城が主軸の話であること、山王戦が描かれていることくらいの事前知識はあった。
あとは原作勢からは声に違和感があるとの不評の声も知っていた。
さて、冒頭からいきなり宮城の少年時代が描かれる。
沖縄出身だというのは意表をつかれたが「宮城」という苗字で考えればなんとなく納得できた。初めから井上先生は宮城は沖縄出身という設定を考えていたのだろうか。
そしてオープニングが始まる。
私は一通り最後まで視聴したあとこのオープニングを何度か見返した。
そのくらい傑作のオープニングだと思った。
私の大好きなThe Birthdayの曲に合わせ一人ずつメインキャラが線画で描かれていく。シンプルだが無駄がなく素晴らしい演出だ。
作画に関してだが全体がアニメというより漫画のような作画で描かれており原作コミックがそのままアニメーションになって動いているという感じだ。
原作勢の私としてはこの作画演出にも大変満足した。
本編では山王戦が描かれつつ宮城の過去について回想シーンが入る形で進んでいく。
そういえば確かに宮城のバックグラウンドに関しては原作ではほとんど触れられていなかった。原作では主人公の桜木はもちろん赤城・三井・小暮の過去や流川の思いなどについては描かれたが宮城に関しては彩子に惚れているくらいしか描かれていなかった。
そういう意味では原作補完の意味合いも強い作品だろう。
ちなみに私は宮城は三井に次ぐ大好きなキャラクターなのでこれは嬉しい補完だった。
中学時代に一度宮城と三井が出会っていたというのも非常に胸が熱くなる演出だった。このことを二人は覚えているのだろうか。
ちなみにその後高校で二人がふたりが再会する時には三井はすでにグレていたが中学でスタープレイヤーだった三井のことを宮城が知っていてもおかしくはない。それがかつて一瞬だが出会っていたことに気づくかどうかはさておいて。
宮城の家族構成についてだが子供の頃に父親と兄が死去。
現在では母親と妹との3人家族である。
この設定にも納得できるところがある。
宮城の性格的には長男というよりは次男、または一人っ子ということが容易に想像できる。また桜木に対しての面倒見の良さからは下の兄弟がいることも想像できる。納得の設定だ。
兄に関しては宮城との1on1の約束を破り友人と釣りに出掛けてしまう。
それに対して宮城は怒り喧嘩腰に言葉を吐き捨てる。
この時点で兄の死亡フラグは立ちまくりだ。
宮城にとって絶対の信頼を寄せていたであろう兄の存在はとても大きいものだっただろう。その兄を失ったことによってもしかしたら少し斜に構えたあの性格になってしまったのだろうか。
だが同じように信頼を寄せる湘北の仲間の前では元の素直な性格も少しは出ているのだろうか。
回想は高校1年時まで進みグレた三井との再会、その確執の原因や昔の湘北の部員たちへの苛立ち、赤城をダンナと呼ぶくらいに信頼している背景などが描かれる。
話は山王戦へと戻る。
概ね原作通りに話は進んでいく。
漫画のような作画も相まって動いている山王メンバーを見れたのは嬉しい。
実は私は秋田出身だ。山王という地名も実際に秋田市内にあり役所などの施設がある比較的秋田の中心街に当たる。
もちろん山王工業という学校は存在しておらずモデルはバスケの名門校・能代工業である。あの初の日本人NBAプレイヤー田臥が在籍していた高校だ。
田臥在籍時私もほぼ同年代なので当時から進研ゼミのCMに出るなど有名人だった田臥の試合を見に行ったこともある。
ちなみに余談ではあるが秋田市内は割と平地が多いので劇中で沢北が参っていたような長い石段がある神社は存在してないがもしかしたら能代にはあるのかもしれない。
そして本編は引き続き山王戦が描かれていく。
ここで私が一番好きなキャラクターの三井の見せ場が訪れる。
すでに疲労で動きが鈍くなっている三井だがSLAM DUNK一の名言メーカー三井からあの名言が放たれる。
「俺の名前を言ってみろ」
そしてそこからメインテーマ曲である10-Feetの「第ゼロ感」のインストが流れ三井の活躍が始まる。このシーンが非常にかっこいいのである。
そして再び名言が放たれる。
「もうリングしか見えねえ」
そうしてゴールを決めた三井は赤城と拳を合わせる。
私は鳥肌がたった。やはり三井はいい。
そして再び過去回想へ入りバッシュを蹴飛ばされ激昂した宮城は三井をボコボコにする。これにより宮城は停学となり三井は前歯を失う。
ここで宮城がなぜそこまでして三井を痛めつけたのかが判明する。
ここも見事な原作補完だと思った。
話は過去回想として沖縄へ向かう宮城へと移る。
そこで亡き兄の形見のリストバンドと週バスを発見し泣き崩れる。
そして過去を思い出し兄の最強山王を倒すという意思を受け継ぐ。
舞台は再び山王戦へ。
桜木・流川 vs 河田・沢北の戦いが描かれる。
初め最強山王の最強コンビに手も足も出ない二人だったがここで流川が覚醒する。天上天下唯我独尊男流川がパスを出すようになり湘北は再び息を吹き返す。
そして再び三井の名言が放たれる。
「静かにしろい、この音が俺を蘇らせる、何度でもよ」
シュートを放った瞬間無音となりその日一番高く放たれたボールは綺麗な子を描きゴールへ吸い込まれていく。
ボールがゴールを通過しネットに擦れる音。
この音が憔悴しきっている三井を再び蘇らせる。
いいシーンにいい演出だ。
こうして追い上げムードで盛り上がる湘北だがここで例のあのシーンとなる。
ルーズボールを追い来賓席に突っ込む桜木。
流川が放つ一言
「いい仕事したぜ、下手なりに」
その言葉に怒り復活する桜木。
そしてこれまで山王一色だった会場の声援も湘北への声援が送られるようになる。会場の空気が変わる。
だがここで桜木に異変が。背中の痛みを感じる桜木。
そして安西監督がメンバー一人一人に声をかける。
こうして話はクライマックスへと続いていく。
ここで話は再び回想へ。
兄のこともありどこかわだかまりがあるような宮城とその母親。
だが兄の存在が再び親子の心を動かしていく。
試合が行われる広島へ旅立つ前日母へ手紙を書く宮城。
翌朝その手紙を読んだ母親は宮城の思いを受け取り本当の意味で宮城と向き合えるようになる。そして密かに会場へ訪れた母は宮城へ声援を送る。
ここで「第ゼロ感」が流れいよいよ物語は最終局面へ。
残り時間は2分を切り点差は7点。
だがここでついに桜木の背中の痛みが限界を迎える。
ベンチへ下がる桜木。だが湘北メンバーは最後まで諦めない。
ファウルにより2本のフリースローを与えられる赤木。
決して得意ではないフリースローを執念で2本とも決め点差は5点へ。
背中の痛みを押してコートへ戻ろうとする桜木。
「オヤジの栄光時代はいつだ?」
「俺は、俺は今なんだよ!」
決意を固めた桜木は再びコートへ。
残り時間はわずか1分。
桜木の決死のブロックから速攻を行う湘北は流川を囮に宮城から三井へパスが出る。
ここで三井の3Pシュート。必死に停めにくる山王はここで痛恨のファウルを犯してしまう。
カウントワンスローとなった三井のシュートはフリースローも決めいよいよ点差は1点となる。
そうして山王のオフェンス、ここで決められてしまうと逆転は厳しくなる湘北はゴールを死守。ここでついに赤木が河田のダンクシュートをブロックする。
ルーズボールを掴んだ桜木だが山王の厳しいディフェンスに再びボールを奪い返されてしまう。
そして沢北がダンクを決めにいくがそれを桜木が阻止。
まさにゴールを死守したふたり。
ルーズボールは流川がキャッチし山王ゴールへ走る。
ダンクを決めようとするが河田に阻まれてしまう。
コート外へ飛んでいくルーズボールに桜木が飛びつき流川へパス。
これが意図的に桜木から流川へ渡った初めてのパスとなる。
その桜木が必死に掴み取ったチャンスをしっかりと決める流川。
ここでついに逆転となる。残り時間は24秒。
ここからは無音、正確には心臓の鼓動のような音だけになる。
原作でもここからはセリフや効果音が一切なく、画だけの描写となる。
そのシーンを完全に再現している。この映画一番の鳥肌シーンだ。
だが最強山王はエース沢北のゴールで再び逆転。
残す時間は9.4秒。
だが諦めない桜木は山王ゴールへ猛ダッシュ。
流川がなんとか相手コートへボールを運びジャンプシュート。
それをブロックに飛ぶ河田と沢北。
このラストチャンスで流川から桜木へパスが飛ぶ。
桜木は全校大会前の特訓んで身につけ、一番得意な位置でパスが来るのを待っていたのである。
こうして山王は完全に虚をつかれる形でフリーの桜木へボールが渡る。
私して一番得意な右斜め45度からのジャンプシュートを放つ。
そのシュートが放たれた瞬間残り時間は0に。
入れば逆転、外せば敗北となる。
美しい弧を描いたボールはゴールへ吸い込まれていく。
それを見守るコート上の選手と観客たち。
ボールはネットを通過し湘北のスコアボードに2点が追加される。
そうして互いに見つめ合い歩み寄る桜木と流川。
そして互いに手を合わせタッチする。
自分たちでも意外すぎる行動に二人とも我に帰り互いにそっぽを向くがそこに駆け寄る湘北メンバー。大歓声に包まれる会場。
ここで宮城はふと天を仰ぐ。きっと兄を見ていたのだろう。
最強山王を倒すことに死力を尽くした湘北は次の試合で嘘のように負けてしまい神奈川へ戻る。
自宅近くの浜辺を歩く宮城、そこに座って海を眺める母を見つける。
亡き兄の面影から解放された母親は宮城に声をかける。
「おかえり」
宮城は返す。
「ただいま」
こうして親子のわだかまりは解消されたように思える。
そして月日は経過しアメリカの地で対峙する宮城と沢北。
ここで映画は終幕となる。
とまあほぼあらすじを追うかたちとなってしまったがとにかくいい映画だった。
冒頭にも書いたが作画が最高で完全に井上先生の画だった。
そして音楽も私の好きなThe Birthday、10-Feetの楽曲ということでこれも非常に良かった。特にオープニング。
このThe Birthdayの曲でこのバンドのことを知った方も多いのではないだろうか。
残念ながらこの曲のリリース後にボーカルのチバユウスケは病気のため活動を休止しそのまま帰らぬ人になってしまったが。
本当に残念でならない。
チバユウスケに書いては以前に記事を書いているので良かったら読んでみてほしい。
話の構成も宮城主点で描かれているもののしっかりと原作を再現、そして描ききれなかった部分を部分を補完されている。
脚本から演出、監督まで井上先生が務めているのでこれが先生の描きたかった本当のSLAM DUNKの完全版なのかもしれない。
原作ファンだったら絶対に観てほしい傑作映画だった。
ここからは少し気になった点を書いていく。
まずはやはり声優交代に関してだろう。
私はアニメから入り原作を読んだリアルタイム世代だ。
それゆえにやはり旧アニメの声というのは非常に印象に残っている。
今回の劇場版に関しては声優陣が全て交代している。
これに関しては劇場公開時に異を唱える声も多かったようだ。
もちろん私も初めの方は違和感が拭えなかった。
だがすぐに慣れてしまいそれほど気にならなくなった。
桜木以外は。
やはり主人公である桜木の印象は強いようでそれがなかなか抜けきれず昨日の時点では最後まで違和感を感じてしまっていた。
だが今日この記事を書きながら再度視聴していたのだが今日になって観る分には桜木の声にも違和感を感じなくなっていた。
それだけこの映画で私のキャラクターの声に対する印象がヌル変えられたのであろう。
もう一点気になった点。
それはラストのアメリカでの宮城と沢北の対峙シーンである。
これには正直全く腑に落ちなかった。
昨日の試聴直後にはそこは宮城ではなく流川だろうともやもやしてしまった。
いくら宮城が主役の映画とはいえそこはご都合主義すぎるだろうと思った。
だが今日少し客観的に映画を視聴して少し印象が変わった。
もちろん流川もアメリカに渡り沢北と対峙しただろう。
そして宮城もアメリカへ渡っていた。もしかしたら他のメンバーもアメリカに挑戦していたかもしれない。
そんな沢北とライバルたちの数ある対峙の中の一つとして宮城との対峙が描かれたのではないだろうか。
そう考えると不思議と少しずつ腑に落ちてきて今こうして文章化することで抱えていたもやもやは解消された気がする。
過去最高に長い記事になってしまったがとにかくいい映画であった。
制作関係者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいだ。
そして改めてチバユウスケのご冥福を祈りこの記事の結びとさせて頂こう。
また機会があったら映画の感想なんかも書いていきたいと思う。
それではまた。