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リザエレ! エレミネイション+ウィンクルム EPISODE 09 『暗闇の握操者』 Vol.1

はじめに

 この度は数ある記事、作品の中から本作品(「リザエレ! エレミネイション+ウィンクルム」)をお手に取っていただき、心より感謝を申し上げます。

 度々のお願いで恐縮ですが、お読みいただく際の注意事項を以下に添えさせていただきます。

 本作品は現在『note』のみで連載しております。その他のブログサイト、小説投稿サイト、イラスト投稿サイトでは連載しておりません。この作品は一部無料にて公開しているものですが、掲載されている画像、文章などは著作権フリーではありません。無断転載、コピー、加工、スクリーンショット、画面収録、AI学習はお控え頂くよう、ご理解の程よろしくお願い致します。

 この作品の物語はフィクションであり、登場する人物、場所、団体は実在のものとは一切関係ありません。また、特定の思想、信条、法律・法令に反する行為を容認・推奨・肯定するものではありません。本作には、演出上一部過激な表現が含まれております。お読みの際は、十分ご注意ください。




Chapter 49 「贈り物」


 十二月二十四日の夕方。まもなく迎える聖なる夜。色鮮やかな照明を輝かせるペミィ・ペミィーの扉の横には『聖夜の日SALE』と書かれた看板をぶら下げた赤と白の服を着たトルソー。店内で接客をする愛叶たちも同じ服に身を包んでいる。
「ありがとうございました~。またお待ちしております」
 慣れた笑顔を振りまいてお客を見送る理衣奈。今日は息子とともにお店のお手伝いに来ていた。聖人はトナカイのコスチュームに身を包んでいる。ふわふわモコモコに覆われている姿が可愛らしい。
「ふぅ~……」
「お疲れさまです理衣奈さん。今日は手伝ってくれてありがとうございます。昨日は一日大変でしたのに……」
 赤い帽子を取って愛叶は言う。
「いいえ、昨日は移動が楽でしたからそんなには。このぐらい平気ですよ」
「仕事もして、リザエレもして、聖人くんのお世話もして、わたしたち頭が上がりませんよ」
「愛叶ちゃんたちのほうが立派だよ。私なんて愛叶ちゃんたちと同じぐらいの歳の頃、毎日遊んでたもの」
「ママ~、これ」
「あ~セイくん、そのおもちゃは売り物だから棚に戻して~。後でプレゼント選んであげるからね」
 理衣奈は聖人のしつけをする。愛叶はそのやり取りを見て心がキュンとしていた。事務室のドアの開く音が鳴る。
 事務室から出てきたのは希海。珍しく彼女も愛叶たちと同じコスチュームを纏っている。昨日は聖夜の日を祝うことにためらいがあったはずなのだが……。彼女に憑依したつもりで言うなら、理由はきっと、「これは一応仕事だからやってるんだよ。というかこれぐらいはあたしだって着る」だろう。
 希海は赤い帽子を取った。「理衣奈、この後はあたしらが接客するから、残るなら地下の部屋で息子と遊んでていいぞ」
「はい、そうします。息子もまだ帰りたがらないみたいなんで……あっ、だからダメだよセイくん。もう~」
「ママ、トイレしたい」
「はいはい。あの、ここにトイレってありますか?」
「一応あそこにあるけど……そういえば長い間使ってないな」
「お借りします!」
 聖人を抱きかかえた理衣奈は希海が指さすほうへと歩み出す。事務室の前にあるドアを開けた途端、彼女の驚く声がこだました。

 『やっ! いろいろ無い! セイくん、ここあんまり綺麗じゃないから他のとこでしようか? ね? 我慢できる?――えっ? できない? ああもう……じゃあここでトイレしちゃって~……』


 ◇


 『はい、ちゃんと湯切りしたらオムツ履いてズボン履いて~。石鹸シートでおててふきふきして~。ごみをここにポイしたら、はい、よくできました~! あと三回おトイレができたらオムツ卒業しようね♪』

 水を流す音が鳴り止んだ後、トイレから出た理衣奈は聖人をソファーに座らせた。そして少し不満げな顔をし、声色をやや低くして彼女は希海たちに言い放った。
「ちょっと、希海ちゃんたち、トイレのがひどいよ。私が綺麗にします」
「それはわたしたちがやりますから、理衣奈さんは……」
 なだめるように愛叶が気を遣うも、理衣奈は大人としての責任を貫き通す。
「いいえ、やります。ちょっとノリアに行って掃除道具買ってきますので、セイくんのことをお願いします」
 そう言って理衣奈は早々と店のドアを開いて、夕闇の中、『300バースコインショップ・ノリア』へと駆け出していった。
「さすが親だな……」
「わたしたち、トイレはいつもコンビニでするもんね」
「どうしたの二人とも? 理衣奈、なんか怒ってるように聞こえたけど」二階の倉庫から降りてきた芽瑠が尋ねてくる。
「理衣奈さんがここのトイレを見て怒って出て行っちゃったんだよ」
「あっ、もしかして掃除してなかったからかな……」
「はじめに言ったんだけどな。まあすぐに戻ってくるだろう」
 希海が背伸びをしたその時、店のドアを力強くノックする音が鳴った。

 『ヤマナカ急便で~す!』

 配達を知らせる大きな声が店内にこだまする。
「あれ、宅配便? は~い!」
 愛叶はレジ下の引き出しからハンコを取り出し、店のドアを開ける。
 店の前には小雑誌ほどの大きさの小包を持った、赤い作業服と赤い帽子がトレードマークのヤマナカ急便配達員が立っていた。
「こんにちは、高乃希海様ですね。あっ、ハンコはいりません。どうも、ありがとうございました」
 マニュアル通りに一仕事終えた配達員の男性は、去り際に不適な笑みを見せた。
「ど、どうもご苦労様です……」
 配達員に違和感を感じながらも、愛叶は店のドアを閉める。
「みんな、荷物が届いたんだけど、誰か何か頼んだ?」
 希海と芽瑠は当然、首を横に振る。
「差出人は誰だ?」
「ええと、これの差出人は……えっ、ルート中央支部だって?!」
「ルート中央支部? 何でそこから荷物が送られてくる」
 当たり前の反応を返す希海。隣で芽瑠は『ん?』と、鋭く眉根を寄せる。
 愛叶は顔を上げて思い出した。「そっか、そういえば今日は聖夜の日だね。この前ルートの人が来た時にプレゼントを贈るとか言ってたからそれのことかも」
「あー、すっかり忘れてた。プレゼントか……文房具とかだったらありがたく貰っておく。ま、大したものじゃなさそうだどな」
 希海は鼻で笑いそう答えた。ルートへの信頼感はとっくに失くしているようだ。
「文房具にしてはこれ、結構重めだよ。ノートでも無さそう。もしかして果物かな? ふふ、何が入ってるんだろう、楽しみ~♪」
 愛叶は小包をレジカウンターに置いて、上機嫌で茶色い包装紙をはがしていく。
 包装紙は三重になっていて、何故か最下部の紙は液体に浸したばかりのように濡れていた。
「うわっ、中身こぼれてるんじゃない? 早く取り出さないと」
 そう言って濡れた包装紙を破り取ると、今度は赤いリボンで結ばれた黒い厚紙の箱が現れた。これもひどく濡れている。
 愛叶は鼻つまんだ。近くで覗いていた芽瑠も鼻をつまむ。
「う、変な臭いがする……」
「何か鉄っぽい臭いがしない?」
 希海も同じ臭いを嗅ぎ取る。
「……マジだ。とりあえず蓋を開けてみろ」
「うん……」
 愛叶はリボンをほどき、黒い紙箱の蓋を掴む、それからゆっくりと持ち上げる――。



Chapter 50 「聖夜の頼客」


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