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さよなら、はじめまして


全然ご飯を食べない人とご飯に行った。少食とか、一日一食とかそういう類ではなく、なんというか、本当に食べないのだ。


しかし、とても食にこだわりがあるようだった。どうやら事前にお店を調べて、メニューを見て、これを食べる!と決めていた様子。その人を待たせてわたしはうんうん唸りながら注文を決めた。


しばらくお喋りをしながら料理を待っていた。こだわってます系の店は、なんたってこだわってます系なので、結構待った。お昼時だったしね。ようやく来たわたしのカレーは焦らされた分とても美味しそうに見える。(おいしかった!)


その人もカレーを頼んだ。目の前にはわたしと違うカレー。とっても美味しそう。でも食べない。延々と喋り続ける。そんなその人を横目にわたしは食べ進める。その人は全然食べない。あ、やっと一口食べた。また喋り始める。スプーン置いてるじゃん。全然食べない。


え?こんなに食べないことある?あったかい食べ物が目の前にあるのに、具合悪いわけでもないのに、食べないでいられることある?初めて出会った人種にわたしはただただ驚いた。食えって。仕事の話とかどうでもいいから食えって。


心の中で口が悪くなりながらも、ちょいちょい「まあ、食べなよ」と促しつつ、わたしは食べ進めた。わたしが食べ終わった頃に、ようやくその人のカレーは半分くらいになっていた。時間軸歪んでるんか?あ、またスプーン置いた。


お昼時で混み合ってきたし、あったかいものはあったかいうちに食べるべきだし、わたし食べ終わってるし、それにわたし食べ終わってるし(強調)、個人的には食べない理由が見当たらないんだけど全然食べない。少しイライラしてきてスマホを眺めていたら「ねえねえ」と。顔をあげたらその人はメニューを見ながら

「まだ食べれる?デザート何にする?」

…は?目の前見てごらん?何がある?え?ビックリしたわたしは思わず「いいから目の前のカレーどうにかせえよ」と心の中に留めておけなかった口の悪さを露呈しながらその人を急かした。


その人は少し不貞腐れながらやっと一般的なスピードで食べ始めた。なんで不貞腐れてんだよ。普通に食えばいいんだよ。


はじめての体験で、わたしは驚くことしか出来なかった。食べるのが遅いとか、そういう次元ではなかった。だって食べようともしないんだもん。そんな全然ご飯を食べない人とご飯に行った。



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