｢ポケモンの世界｣に憧れて

最近すっかりゲームをプレイしなくなってしまったが、そんな今でもわたしは時々思う。｢ポケモンのいる世界で暮らしてみたい｣。

犬を散歩させている人とすれ違うのと同じように、ポケモンと一緒に歩いている人とすれ違いたい。家に帰ったら、お留守番してくれていた自分のポケモンに嬉しそうに出迎えられたい。辛い時や寂しい時、大好きなポケモンをぎゅっと抱きしめて癒されたい。アニメやマンガ、ゲームの世界だけだと分かっていても、もしもこの世界にポケモンがいたら、どんなに素敵だろうと思う。

始まりは、一本のゲームカセットだった。周りの友達がみんなゲームの話をしているのに、当時まだゲーム機を持っていなかったわたしは、周りの話題に置いて行かれるのが嫌だった。みんなと同じようにゲームの話で盛り上がりたくて、母におねだりして初めて買ってもらったのが、ニンテンドーのDSライトと、｢ポケモン 不思議のダンジョン 青の救助隊｣。わたしのポケモン愛が始まる第一歩だった。

人間の主人公がとある出来事をきっかけにポケモンだけの世界へ飛ばされてしまい、自分自身もポケモンになってしまうところから始まるこのゲーム。自分のパートナーとなるポケモンに発見され、一緒に救助隊を結成して困っているポケモン達を助けながら、記憶を失った主人公の謎を突き止めていくというストーリーだ。

遊び始めてすぐに、当時小学生のわたしはその世界観の虜になった。ポケモンになった自分を操作してダンジョンを探検するのも面白かったし、メインストーリーの中で次々に登場するポケモン達のキャラクターもそれぞれに個性的で魅力的だった。そして何よりもストーリーが素晴らしく、クライマックスを迎える時には涙を流さずにいられない。クリアした後のやり込み要素もたっぷりあって、飽きること無く遊び続けられた。

そうやって｢青の救助隊｣にすっかりハマってしまったわたしは、同シリーズの新作｢時の探検隊｣｢闇の探検隊｣が発売されるや、歓喜して即購入した(小学生には少し高い買い物なので、お年玉か誕生日プレゼントか何かに買ってもらったのだと思う)。

この｢ポケモン 不思議のダンジョン 時の探検隊／闇の探検隊｣こそが、わたしが声を大にしてお勧めしたいゲームソフトだ。

ゲームを普段やる人、ポケモンが好きな人はもちろん、ゲームをあまりやらない人や、ポケモンに馴染みがない人にも是非遊んでみてもらいたい。むしろ、そういう人にこそ、新鮮な気持ちでプレイしてもらいたいゲームだ。わたし自身、このゲームをきっかけに新しい扉が開き、｢ゲーム｣や｢ポケモン｣の世界に出会うことができたから。

このゲーム最大の魅力はストーリーだ。通常の｢ポケットモンスター｣シリーズは、自分がポケモントレーナーとなり、ゲットしたポケモンをバトルさせながらストーリーを進めていくことになるが、この｢不思議のダンジョン｣シリーズは自分自身がポケモンとなり、ポケモンの自分を操作することでストーリーが進んでいく。自分がポケモンなのだから当然他のポケモン達の言葉も分かるし、技を覚えてバトルすることもできる。

自分を助けてくれたポケモンとパートナーとなり、｢探検隊｣として活動していくことになるのだが、次々に登場するポケモン達が織り成すストーリー展開がとても深く作り込まれていて、先の読めないドキドキや、今までの認識をひっくり返す驚きの真実が用意されていたりして、｢探検隊として謎を究明していく｣ことに終始する単純なストーリーではない。

数多く登場するキャラクターそれぞれの関係性も細かく作り込まれていて、所々ほろりとさせるハートフルな人間(ならぬポケモン)ドラマが繰り広げられていく。特にパートナーと信頼関係を築いていく過程が、自分とパートナーの心情や葛藤を丁寧に描いてくれるのですんなりと感情移入することができ、いつの間にかパートナーポケモンのことが愛おしくてたまらなくなっている。

たくさんの場所へ行き、たくさんの試練を共に乗り越えて、二匹の絆が最高潮に高められた状態で迎えるクライマックスシーンは、素晴らしいBGMも相まって涙せずにはいられない。自分自身のセリフはほとんど無いが、素直(すぎるほど)でおしゃべりなパートナーの涙とセリフが、当時まだ小学生だったわたしの幼い心をも激しく揺さぶって、深い感動を味わったことを未だによく覚えている。

笑いあり、涙あり、波乱と試練ありのボリュームたっぷりなストーリーが大好きで、わたしは何度もセーブデータを消してはストーリーをなぞり直し、何度も飽きずに感動した。もう何度メインストーリーをプレイしたか分からない。多分、軽く10回は超えていると思う。映画やアニメ、小説やマンガなど、気に入ったものは何度でも繰り返し観たり読んだりするわたしだが、途中乗り越えなければならない試練(このゲームの場合は、手強いダンジョンと強力な敵ポケモンを突破すること)を何度も味わってまで、こんなにも繰り返しプレイしたいと思えたゲームは、後にも先にもこのゲームだけだった。

就職してからは、ゲームをプレイすることはほとんど無くなってしまったが、ポケモンは今でも大好きだし、子ども時代に｢闇の探検隊｣を何度も遊んでとても楽しかった記憶は、いつまでも大切な思い出だ。

こうやって記事に書いていると、また１からストーリーをプレイしたくなってきてしまった。引き出しの中にしまいこんだDSライトを引っ張り出して、もう一度懐かしの｢推しゲーム｣で遊んでみるのもいいかもしれない。

#全力で推したいゲーム