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出来事ではなく、こころとからだの関係を見ていくことがなぜ大事か

からだのしんどさと、きもちのこわさの研究

昨日診察室に来られた自分研究員さんは、
自分で認知行動療法の本を読んで、パニック障害を克服したい!
と、熱心に自分の記録を持ってきてくださいます。

最近では「身体のしんどさと、気持ちの怖さの区別」、
というのを発見されてから、しんどさが全然楽になったと、報告してくださるのです。

患者さんって、歴史的な心理学者が提唱した理論を、
自力で発見して、そのときに回復していかれる。
一人ひとりが、偉大な天才発明家だなー、って、
いつもびっくりしてしまいます。

で、その研究員さんに、他の研究者のためにも、
どんなふうにしているのか、聴いてみました。

・以前の自分
一人で出かけると、しんどい!バクバクしてくる!
→ だんだん怖くなる。ほんとに怖くなる。
→ 動悸がしてきて、汗が出てきて。
→ やばい、死ぬんじゃないか。
→ 帰ってからもバタン。。。動けなくなる。
→ 何をするのも嫌。。ダメージ引きずりまくり。

・最近の自分
一人で出かけると、しんどい!バクバクしてくる!
→ 自律神経の乱れだな、からだの反応だな、
→ 勝手に怖いと思っているだけ。
→ 漢方薬飲んで、トントンして。
→ そのうち落ち着くだろう。
→ え?帰ってからも、普通に動ける!
→ なんかダメージない。家事もできる!

ということだそうです。
なるほど!
シェアさせていただきます。

(でも、ここはいつも誤解があるので、書いておきますが、
誰かのマネして、病気を克服しよう!とすると、
たいていめちゃくちゃ悪くなります。
病気からはもう免れない、これが今の自分なんだ、
腹を据えて見てやろう、
という感じから発明は生まれるようです。)

ストレスって、どこにある?

診察室のテーブルに、認知行動療法で使う、
自分に起こっていることを整理するためのツールが置いてあります。

こういうの ↓

アセスメントシート

外の出来事に対して、
自分の中で、どんなことが起こっているのか、
よく見て見る時に、とても便利です。

ひどい状況ばかりで、どうにもならない、なんとかしなきゃ、
と、外の出来事ばかりに僕たちは追われてしまいますが、
表向きの状況の解決ばかりにこだわってしてしまうと、逆説的に、なかなかそこから抜け出せない。

そもそも、同じ出来事でも、人によって問題に感じる人もいれば、それほど問題にも感じない、という人もいるのだから、ストレスを減らせる方法は、どっか別のところにあるはずなのです。
それは、ストレスは、出来事の方ではなくて、自分の内側の、神経系や内分泌系の反応に起こっていることだからです。

心療内科では、こころとからだの関係を振り返ることで、
生体の持つ本来の自己調整システムを取り戻すことが、目標です。
状況への対策はまず一番に大切ですが、心身の回復にとっては、まだ準備段階というところですね。

その瞬間はことばにならない

さて、もうひと方、天才研究員さんを、紹介します。
たいへん深刻な病で闘病されているご夫婦なのですが、
いつも明るく、あまり深刻味はないのかな、というひとです。

昨日は、机の上にたまたま置いてあった表情カードがあったのですが、それでなんとなく遊び初めて、パパパっと並べられたのです。

「今の状況、こんなやな」

ああ! そういうことですか!
と、みんなびっくり、なんか納得。

行動は荒れて、気分はひどく、身体はボロボロで泣いている、
でも、気持ちは前向き、状況には淡々と対処している。

こういう瞬間って、言葉で説明できないことで、
医者も、奥さまも、ご本人自身さえも、
なんか、びっくりなのです。

そんなふうに、こころとからだの関係を振り返って、
あ~~そういう感じなんですね!
っと、こころとからだとみんなが繋がったような、
不思議な共感の、その瞬間、、

何も状況は変わっていなくても、
一瞬で世界は変わった感じがしたのでした。

「ふだん、ことばで言えない気持ち、あるよなぁ」
「家でもこんなカード、作ろうか!」
、と、ポカポカとした感じで、
仲良く診察室を後にされたのでした。







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