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治す力ではなくて治る力に味方してみた

こころの病は、治すものではなく、治るもの。
治せないだけで、治る力はある。

と昨日、思いあたって、
そして迎えた、今日の診察室風景~

なかなかうつが治らないまま、
復職の期限が迫っている人が、
焦っている。

病院には、病気の回復を目的に、
来ていただいている以上、

医者は、仕事や経済事情より、
命と健康を第一優先した意見を言わなければいけない。

家庭生活もほとんど動けない状態で、
朝から出勤できるとは、とても思えないし、

焦って無理して復職でもしたら、
明らかに病状は悪化してしまう。


でも、、、僕が治療に当たったからって、
まだ治せていないじゃないか。


決まりきった僕の意見を言う前に、
この人の意見を、聞いてみようと思った。


「それで、今の体調で、どうやって、
 復職を考えているの? 」

「……気合いで(笑)」

この人には、今までもそうやって、
気合いで限界突破したエピソードがあることは、
僕も知っていた。

しかし、それが、うつになりやすい思考だと、
僕は今まで繰り返し、指摘してきた。

でも、思えば、
それが、この人の強みでもあった。


「僕がどう言うか、もう、分かってますよね?(笑)
 でも最終的には、あなたが選ぶ考えを応援したいです。」

ということで、復職に向けての、無謀なる挑戦に、
一緒に作戦会議しましょうか、ということになったのだ。

患者さんの表情は、パッと明るくなる。
僕も、自分を許せた自分が嬉しくなる。


そして、もし本気で、今の身体で復職するとしたら、何ができるか。

あと僅かな期間でも、朝起きれる準備をして、
体力をつけておこう。

業務内容で負担になるものをもう少し細かく洗い出し、
それを免除してもらえるように、復職診断書に、記載しよう。

など、思いもよらず前向きな意見が出てきたのでした。


うまくいくか、行かないかは、わからないです。
医者としての判断に、問題があるかも知れない。

でも、治す力ではなくて、
治る力の方に味方するって、
そういうことなのかなと思うと、
なんだか、すがすがしい気持ちがしました。


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