見出し画像

防災分野の取組み紹介①「プッシュ型支援による必要物資量の推計技術開発」

こんにちは。一般社団法人RCFの井口です。

今回は、RCFが取り組んでいる社会課題の分野のうち、防災分野での取組みを紹介したいと思います。

現在、RCFは内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の第2期に参加し、災害発生直後の「プッシュ型支援」を支援するシステム開発の一部を担っています。


災害発生直後の物資支援の仕組み「プッシュ型支援」とは

災害発生後、国や都道府県、被災自治体は被災者の生活を支えるために、食品・飲料水・生活用品など様々な物資を調達し、各避難所を中心に支援を行っています。

2011年の東日本大震災の経験から、特に大規模災害のような災害の発生直後、被災自治体の機能が低下し、被災者に必要な物資ニーズを把握することだけでなく必要な物資を調達・配送することも難しい状態になることが課題となりました。

そこで、特に被災直後の物資不足を解消するための「プッシュ型支援」と、ある程度被災自治体やライフラインの機能が戻ったタイミングでの「プル型支援」の2つの物資支援方法が取られるようになっています。

プッシュ型支援とは
支援物資のニーズ情報が十分に得られない被災地へ、ニーズ予測に基づき緊急に物資を供給する場合の輸送方法支援物資のニーズ情報が十分に得られる被災地へ、ニーズに応じて物資を供給する通常の物資支援の場合の輸送方法
※引用元:国土交通省 国土交通政策研究所「支援物資供給の手引き」
プル型支援とは
支援物資のニーズ情報が十分に得られる被災地へ、ニーズに応じて物資を供給する通常の物資支援の場合の輸送方法
※引用元:国土交通省 国土交通政策研究所「支援物資供給の手引き」


RCFの取組み:プッシュ型支援による必要物資量の推計技術開発

プッシュ型支援は、「被災地の物資ニーズを把握する前に最低限の物資を送る」仕組みです。現在発災が想定されている首都直下地震や南海トラフ沖地震といった大規模災害の具体計画では、発災直後1日以内には「基本8品目」と言われる物資の調達が動き出し、3日目〜4日目には最初の物資が届く計画となっています。

「基本8品目」とは
生活に必要不可欠と見込まれる、食料、毛布、乳児用粉ミルク又は乳児用液体ミルク、乳児・小児用おむつ、大人用おむつ、携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパー、生理用品の8品目のこと。
※:引用元:内閣府「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画

被災地のニーズが把握できない可能性が高いなかで「何を、どこに、いくつ送るのか」の判断をする必要があり、その意思決定の難しさだけでなくプッシュ型支援による物資の過剰供給やニーズのミスマッチ等が課題となっています。

そこでRCFは、発災直後の被災者数推計を用いてプッシュ型支援で調達が必要な物資量を推計する技術を株式会社日立製作所と共同で開発を行っています。

なかでも特に、「どの品目を、どんなロジックで推計するか」という品目の選定とロジックの検討がRCFの主な役割です。専門家や災害対応経験のある団体・自治体へのヒアリングや研究論文などから、大規模災害時に必要な物資を選定し、推計値の算出ロジックの検討を進め、国の具体計画に記載される必要不可欠な8品目以外にも、「災害関連死を予防するための物資品目」や「感染症対策品目」、近年頻発する風水害に対応するための「復旧品目」などの品目の追加を提案しています。

「災害関連死を予防するための物資品目」については、特にアレルギー等が原因で避難生活のなかで十分な栄養がとれない要配慮者のための品目を提案し、地域安全学会にて発表も行っています。

発表した論文は地域安全学会の梗概集でお読みいただけます。


このように、RCFでは特にあらゆる公的支援(公助)の機能が大きく低下する災害発生直後の支援をバックアップする視点でSIP事業に取り組んでいます。今後も、民間企業・団体のリソースを活用して様々な取組みを進めていきたいと思っています。

その他のRCFの取組み

今回紹介したSIPでの取組み以外にも、WEBサイトで防災の取組みを紹介しています。


スクリーンショット 2021-09-29 10.32.10


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?