伝統のアップデート。僕たちがやりたいことは、「その先」にあった
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日本のファンを作るため。
お店は決して、ゴールじゃない。
前半でも少し触れましたが、遠藤さんは、「恵比寿 えんどう」でお寿司を提供すること自体を、究極のゴールにはしていません。
あと7年後、40歳の将来の夢として、伊勢志摩の地でオーベルジュを始めることを、決めています。
自身もサッカー留学でイギリスに暮らしていた遠藤さんは、海外の、いいものを知る人々へ、日本のどこかに今日も息づく「生きた伝統のカタチ」を、発信したいとの思いがあるのです。
「恵比寿 えんどう」は、その1つめの場。
未来に思い描く「伊勢志摩ビレッジ(仮)」では、お寿司はもちろん、日本酒や、日本茶、そして包丁など、料理の道具などについても発信したい、といいます。
たとえば現在、包丁は、見た目の輝かしさのために、ステンレスを使った「鏡面仕上げ」で仕上げることが一般的。
一方、本当にいい包丁は、鍛冶屋さんが鋼の仕上げをして作る。でも一般的ではない。
結果、国宝級の職人さんに後継がいないという現状があるそうです。
この矛盾は、本質を見る目を曇らせてしまう。
遠藤さんが言う<発信したい>とはつまり、「日本らしさ・良さを絶やしたくない」との思いでもあるのです。
「本質とは何でしょう?」と質問してみると、「一言で言うのは難しいですね」と笑いますが、
年間60カ所、60人に出会いにいく中で、丁寧に、着実に、「日本の良いもの」だけを手渡していくーー。
遠藤さんの横顔には、そんな覚悟が滲んでいるように感じられました。
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曇りなく、焦点を合わせて。 相手の思いに、呼吸を合わせて。
今回の会津旅で、僕が改めて思ったこと。
人の思いを直接感じ取りにいくこと、大事だと感じました。
自然と人と、お酒は、ひと続きのもの。
情報はたくさんあるけれど、向かい合う相手に、どれだけの本質、つまり、「人の思い」があるか? 何を大事にしているか?
そこに焦点を合わせていきたいと思います。
また、日本酒とお店の作り手も、届け手も、お互いの努力が必要です。作り手も顧客のことを知らないといけない。もちろん、発信する人も知らないといけないのです。
人の思いによって、作られる味が変わるから。
そして「日本人」と「日本」の距離も同様。近いようで、日本人は日本の良いものをまだ知らないこともーー。
旅をして、気づいたことです。
RINはブランディングの会社ですが、目の前の、思いのある人たちに、向かい合い、彼らの生み出す体験の、価値を最大化したい。
その気持ちを今回、確かなものにしました。
こうやって、遠藤さんや、生産者やみなさんと、喜びを分かち合える会社でいたい。
評論家で終わるのは、NGです(笑)。
だから、これからも出かけていきます。
思いこそ、人を動かすから。
遠藤記史さん(恵比寿 えんどう)
東京都渋谷区恵比寿南1-17-2 Rホール 4F
Photo by Ryo / TAKU Text&Edit by PEKO
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