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伝統のアップデート。僕たちがやりたいことは、「その先」にあった

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こんばんは。rin branding office 安井です。

僕がブランディングの会社rin branding officeを起業するきっかけとなった存在・遠藤記史さんと訪ねた、福島県会津での話をします。

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いいものの、理由。 きちんと知って、伝えよう。

遠藤記史さんは33歳。イギリスでのサッカー留学を経て、日本で修業、2019年2月に「恵比寿えんどう」を開店。僕はこの開店に合わせてブランディングのお手伝いをしています。

開店して1年あまり。しかしもともと遠藤さんが目指しているのは、お寿司屋さんを超えた、もっというと、お店を超えたところにあるのです。
彼は常々「日本の本当にいいものを、この場で体験してほしい」と言います。
たとえば、そのひとつに、日本酒がありました。

『体験を提供するためには、いいものの理由をまるごと知る必要がある。
生まれた場所や、作る人。会いに行き、わかることから』

そんな話の流れから、秋の終わりの11月。遠藤さんと仲間たちで、日本酒の生まれる場所へと向かいました。
めざす先は、福島県会津地方、5つの伝統ある蔵元です。
旅の友は男8人。
朝7時、恵比寿に集合です。

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「恵比寿 えんどう」のスタッフと、料理や日本茶の発信をするメンバーたち。(真ん中が遠藤さん、右端が僕。会津で合流した方を含め、写真は9人です!)

『「映え」や「かっこよさ先行」じゃなく、本来の「美味しさ」こそが大事で。』

『「見た目を超えた深みを伝えるのは簡単じゃないよね・・・」
「でも、いい方法はあるはずだよ。」』

ーー レンタカーの車内では、「日本のいいもの」「本質」という言葉がいろいろと、飛び交います。

スマホやSNSを通じて得る情報。
それはもちろん、知るきっかけになるけれど、情報はやはり情報なのです。

自分のお店で日々、その時・そこにしかない「体験」を提案する遠藤さんは、
ものづくりの現場に行くことを、特に大切にしています。
「年間で、おそらく60カ所くらいには行っていますね」

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東京から約4時間。福島・会津へ到着しました。

福島の11月はお米の収穫の時期も終わり、厳しい冬への準備をしているようでした。
日向はまだ暖かいけれど、風は強く冷たく感じます。

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受け継ぐための、アップデートは今日も。

今回めぐる酒造は5蔵。いずれも100年以上続く由緒ある酒造です。

▼「冩樂(写楽)」「會津宮泉」を造られる宮泉銘醸さん

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▼「山の井」を定番とする会津酒造さん

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▼「会津娘」が定番の高橋庄作酒造店さん。酒造り風景

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そもそも、ここ数年の会津のお酒は、伝統のアップデートが盛んに行われています。
その1つに、10年以上の技術開発を経て誕生した福島産ブランドの酒米「夢の香」と、初の福島県産酵母「うつくしま夢酵母」があります。
 
また、蔵の内部にも、温度管理や湿度調整など職人の技術が結集していました。
たとえば、分光光度計という装置を使えば、水分の中に含まれる成分を分析できますが、
この装置が無い時代はどのように定量的に分析してきたのでしょうか?
温度、湿度の調整ができない時代は、まさに自然との戦いだったのであろうと思います。

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作りたい、という思い。それは、すべてを形づくる。

そして「冩樂(写楽)」や地元ブランド「會津宮泉」を製造する宮泉銘醸さん。遠藤さんが日本酒をお店で提供している蔵元さんです。
今回初めて、蔵元杜氏を務める宮森義弘さんとお会いすることができました。

宮森さんが地元にUターンして杜氏となり、数年後、弟の宮森大和さんは「兄の作った酒の味に感動して」入社を決めたそうです。
穏やかな風貌なのですが、ひととき蔵に入ると目が変わる。
「森の中で会う熊のような目」と遠藤さん。
時間も惜しまず向き合い続ける姿に、共鳴する部分が大きかったようです。

「労働時間ありきで働く、という世の中の流れもあります。ただ、いいものを作るために、かける時間は関係ないというのが宮泉さんのスタンス。

うちはブラック企業ですね、なんて冗談めかしていましたが(笑)、僕はその姿勢こそ信頼できるなと思ったし、だからこそ本当の美味しさが生み出せると思っています」

人も、手仕事も、アップデートは素晴らしいこと。でもーー。
蔵をめぐりながら、遠藤さんは、それが全ての目的になってはいけない、と話します。
機械化・効率化だけが進めば、日本酒は全部一緒になってしまうから。
ともすれば、売れることが最優先になってしまうから。

酵母も酒米も、福島産。それももちろん素晴らしい。
でも本当に素晴らしいのは、「良いものを作ろう」という【人の思い】が形になったこと。
同じように日本酒も、人の手で愛情を注いでいるからこそ、顔のあるお酒ができるのです。

そんな思いが、味に出る。そんな思いごと、お客様は味わっているーー。
当たり前のようで、とても大きな、再確認の旅となりました。

Photo by Ryo / TAKU Text by PEKO


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