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品川駅の広告炎上騒動から、広告関係者のレピュテーションリスクを考える

「バズるけれど炎上はしない広告を作りたい」
他社の炎上事例を目にするたび、頭を悩ませる広告関係者は少なくありません。

10月4日、品川駅コンコースを全面ジャックした広告が炎上しました。「今日の仕事は楽しみですか」というメッセージに対し、「朝からこの広告を見るとツラい」「楽しみでなくても、しなくてはならない仕事はあるのに」などと批判が集まり、掲載の翌日には広告が取り下げられました。
Twitter上では「#品川駅前で一番心傷付けた奴が優勝」というハッシュタグで大喜利化までされ、テレビ朝日やABEMAなど多くの情報番組でも紹介されました。

ある意味「バズった」本件ですが、SNS時代におけるどんな企業でもありえる広告のリスクが可視化された事例といえます。
本稿では広告関係者として気になる、同様の炎上騒動をおこさないためにどうすれば良いのか考えていきたいと思います。

意図しない意味で解釈される

現在は削除されましたが、このnoteに掲載している写真画像は、広告主のアルファドライブのCEO麻生氏の個人のTwitterに投稿されたものですが、実際の広告は「今日の仕事は、楽しみですか。」という文言がずっと表示され続けていたわけではありません。
メッセージは流れており、文章の続きには「今日の仕事が楽しみだと思える仕事が増えたらこの社会はもっと豊かになるはず〜(略)」と続きます。

アルファドライブはリブランディングのタイミングで「今日の仕事が楽しみなビジネスパーソンを増やす。」とスローガンを新たに掲げ、10月から新聞広告などを展開していました。本件の火種は品川駅の通行客の投稿からではなく、品川駅で展開された広告をCEO本人が写真に撮り、これを投稿したことで批判が集中する事態になったものです。

特に、尖った広告を打つときはある程度のクレームは容認する企業もいますが、今回は広告主として、意図していない意味で解釈をされたケースと考えます。

このように、ちょっとした軽率な発言・発信からでも予想外の炎上をしてしまい、社会的信用を失ったり、ブランドに傷をつけてしまったりするリスクが高まっています。

では、どうすればよかったか?

もし広告関係者が、同様の炎上騒動をおこさないために予防策を立てたいとお考えであれば、以下のような取り組みをするとよいでしょう。

・他社炎上事例を共有するなどして、制作チームのメンバーに意識を高めてもらう
・できるだけチームメンバーが発言しやすい場をつくる
・プロジェクトの始動段階から、レピュテーションリスクの評価ができるメンバー構成にする(レピュテーションリスク評価については以下のnoteを参照)
・炎上した場合のリスクの洗い出しを行い、対応策を決めておく

広告を制作する初期段階からリスク評価ができるチーム体制にし、万が一炎上した時の対応策まで、最低限次の項目は事前に決めておきましょう。

・炎上モードへの切り替えのタイミングをいつにするか?
・炎上が起きたときの5W1H
― どのように炎上を検知し、誰が誰に何を報告し、どこに集まるか?
― 集まったときに何をどのような基準で決めるか?
― どのステークホルダーとコミュニケーションを取る必要があるか?
― メディアその他ステークホルダーへの情報発信はどうする?

そのためにはこれらの取り組みが、ポジティブイベントと浸透できるよう、場の空気を軽くし継続的にカジュアルに行えるよう工夫が必要です。

今、多様性を重んじる社会で炎上してしまう事象が多数発生する一方、その後の対応次第では、「神対応」と称され信頼が回復するケースも珍しくありません。
リスクトレンドを理解し、正しくテイクリスクを行い、恐れず時代に応じたメッセージの発信を広告関係者が行えることを願います。

【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

PR会社(レイザー株式会社)代表 民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。SDGs/ESG視点からの「攻める」コミュニケーション戦略と、「守る」レピュテーション・リスク管理の2軸から広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開。

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