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「BMWアイス事件」から考えるチャイナリスクと広報戦略

今朝、Wechatに中国人の友人から1本のショート動画が届いた。

その動画は、インフルエンサーのおじさまが「BMWアイス事件」について話しているという内容だった。アイス事件の経緯について説明した後、企業文化が大事なんだよ〜的なおじさまの最後の見解が、思いのほかちゃんとしたコメントですごいなーと感心した。

「事件の経緯はだいたいこんな感じ」と説明をはじめるおじ様インフルエンサー

同日の午後、外出先でたまたま手に取った読売新聞の国際面に「BMW批判 中国やまず」と大きなスペースで取り上げられているのを目にした。

なんでも騒動後にBMWの株価が3%超下落し、これは時価総額で21億ユーロ約3100億円)相当になるらしい。

今や、世界の高級財市場において、中国人による消費は3分の1以上を占めている。チャイナリスクを考えなければいけない企業は確実に増えているだろう。そこで今回は、すこーしでも中国市場と関係がある方向けて、いろんな事例からチャイナリスクと広報戦略について書きたいと思う。

「BMWアイス事件」の経緯

ではいったい何がこんな話題になっているのか?
事件が起こったのは、中国上海で開催された上海モーターショー。
BMWはこのイベントで、来場客にアイスクリームを配っていた。

でも、問題が起こったのはその配り方だった。

BMWの女性スタッフが中国人客に対し「アイスクリームの配布は終了した」と断ったその後、外国人風の男性にはアイスクリームを渡してしまった。
この様子が動画に撮影されて、中国のインターネット上で大きな反発を招いた。

動画が広がった結果、BMWのブース前にたくさんの人が集まって、批判の声が上がったり、警備員が出動する騒ぎになった。最終的には、BMW車のボイコット(買わない運動)を呼びかける声が上がった。

BMWは、もちろん中国でのビジネスが大事なので、すぐに謝罪を表明。
しかし謝罪は中国人の怒りを鎮められず、さらなる説明が求められた。(今ここ)

ドルガバとベンツの事例から考える中国市場での広報対応

実は、中国市場で問題を起こした企業はBMWの他にもある。

2018年はイタリアのファッションブランド、ドルチェアンドガッパーナ(D&G)が、そして2019年はドイツの自動車メーカーメルセデスベンツが批判を集めた。

まずは、ドルガバの事件。

ドルガバの公開した動画より:イタリア料理を箸で食べる中国人モデル

ドルガバは上海でのファッションショーに先駆けて、中国人モデルがイタリア料理を箸で食べるのに苦戦するという内容の動画が公開した。
しかしこの動画が、人種差別的な内容だとして非難を集めた。
さらに、共同創設者ステファノ・ガッバーナのインスタグラムのアカウントから送信された
「これから世界的なインタビューを受けるときは、必ず中国はクソだということにするよ」や「無知で汚く、臭う中国マフィア」といった内容の中国人に対する侮辱的なメッセージが流出した。
ドルガバは謝罪声明を発表すると同時に、SNSのアカウントがハッキングされていたと主張したが、ショーは開始数時間前にキャンセルされた。
アリババをはじめとする中国の主要EC企業が各社のECサイトからドルチェ&ガッバーナ製品を削除。ステファノとドルチェの2名は謝罪動画公開したが、中国市場での取り返しのつかない打撃を受けた。

ブランドを守るための対応はどうすればいいか?

一方で、ベンツは事態を収束させた。
事件は2019年に中国陝西省西安のベンツ販売店で起こった。

動画より:ベンツのボンネットに乗り講義をする女性の様子

新車購入者の中国人女性がディーラーとのトラブルをSNSで告発し、大きな波紋を広げた。

この女性は自分の誕生日のお祝いにとベンツの新車を購入したものの、エンジンに異常が見つかった。ディーラーに問題を報告したが適切な対応をしてくれなかったと主張し、泣きながらSNSで自分の苦悩を訴える動画を投稿。

この動画が拡散されると、中国のネットユーザーから怒りの声が上がり、メルセデス・ベンツのブランドイメージに大きな打撃を与えた。

事態を重くみたメルセデス・ベンツは、販売店の対応が「ブランドのガイドラインに背くものだった」として謝罪するとともに、女性との和解交渉のために専門班を西安に派遣する。
さらに「販売店の対応はブランドが堅持してきた原則に背く行為」と謝罪する声明文を発表した。

その後両者の間で和解が成立し、手厚い和解内容が話題になった。
【和解の内容】
・新車に交換
・交通費補助1万元(約17万円)
・この女性にもう一度、誕生日パーティーを開いてもらい、その費用を全額負担する。
・さらにさらに、女性をドイツのベンツ生産工場に招待する。

中国では国民感情を理解して、ビジネスを展開することがとても大切になる。

考えた方が良いリスクの要素には、中国人の感情や価値観への理解不足、地域差のある文化や習慣、政治・経済的な影響、SNSを通じた情報の拡散力などが挙げられる。


中国市場を無視することはできない。
だからこそ、中国市場と関係がある企業は、中国人の感情や文化を理解し、適切なマーケティング・広報戦略を立てることが必要になる。
これらの事例を振り返ってみると、失敗や問題が起きた後に、どのように対応し、改善していくかが企業の評価に大きく影響することがわかる。失敗から学び、適切な対応を取り、信頼を回復することができれば、企業の評価も向上する。(可能性が高い)

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