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ブランドを守りたい経営者が知っておくべき、SDGs/ESGを企業価値につなげる方法とリスク

SDGs/ESGやサステナブルというテーマはすごく正しいことで、誰も否定できない。それ故ちょっとワクワクしなかったり、そもそもうちの業種と関係ないし、リソースが無駄にかかりそう、そのうち必要に迫られたらやるだろう(今じゃないけど)と感じていますか?
今回はそんな方のために、以下の項目について考えていきます。

SDGsに取り組まないリスク

SDGs/ESGに取り組まない(少し大袈裟な)リスクは、以下のような例が考えられます。

・レピュテーションリスクが高まり、企業ブランドの価値が下がる
・人材確保(特にZ世代の若手)が困難になる
・資金調達が難しくなる
・機会損失

電通が行なっている今年(2021年)発表した調査によると、生活者のSDGs認知率は54.2%で、前年調査からほぼ倍増しました。

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出典:全国10~70代の男女計1,400人を対象とした「SDGsに関する生活者調査」より抜粋 https://www.dentsu.co.jp/news/release/2021/0426-010367.html

もちろん認知率が高いからといって、実際SDGs/ESGやサステナビリティに関してプレミアを払ってもいいと考える日本の消費者は、欧米に比べてまだまだ少ないのが現状です。

しかし今後このような潮流は、ますます強くなるでしょう。
世界経済フォーラムが毎年発行している「グローバルリスク報告書(”The Global Risks Report”)」の2021年度版において、「今後10年間で発生する可能性が高いグローバルリスク」の上位5位までのリスクが、環境および社会関連のリスクでした。

「今求められている社会課題に対し、会社としてどのような対応を考えていますか?」
例えば、メディアなどからのこのような質問に対して、スムーズに回答できないケース。これまで日本企業は、高度経済成長期(1950~60年代)の公害問題に関する環境への対応や、CSR浸透を背景としたさまざまな社会課題への対応を行ってきました。SDGs/ESGも企業価値を保護するための必要コストとして捉えた「守り」の活動になっていくと仮定すれば、意図せずSDGs/ESGに逆行した企業活動を行うことで、世間から批判を浴びてしまうリスクが高まると考えます。

海外では、BLM運動やコロナウィルスの流行により、さまざまな社会問題に対して企業がどんなスタンスを取るのか表明し、行動することが生活者より求められています。実際に多くの企業はこれらに対応するため、用意されたコミュニケーション戦略によりスピーディに対応しています。これから先は日本企業も、社会問題に会社としてどういうスタンスを取るのかということをはっきりさせないといけない時代になると考えられます。SNSの普及により驚異的な情報伝達のスピードがこの潮流をさらに加速させています。

企業価値はマルチステークホルダーからのレピュテーションの集積。レピュテーションリスクが顕在化すれば、企業ブランドの価値は下がり、売り上げが減少、投資家が離れ、資金調達やSDGs/ESGネイティブと言われる若手のZ世代採用が困難になるのです。

世界最大の資産運用会社ブラックロックによる、投資先に対するサステナビリティ・リスクに関する積極的な情報開示要請はその象徴の一つといえます。

このほかにもSDGs/ESGの課題はさまざまあります。このような課題の中に自社にとって、新たなリスクを見つけることができます。

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出典:MSCI ESG Research (2020, November). “MSCI ESG Ratings Methodology Executive Summary.” Retrieved from https://www.msci.com/documents/1296102/21901542/MSCI+ESG+Ratings+Methodology+-+Exec+Summary+Nov+2020.pdf

SDGs/ESGに取り組むと企業価値は上がるのか?

では、企業がSDGs/ESGに取り組むメリットは何なのでしょうか?

エーザイが約10年、100弱のESGのKPIについて膨大なデータサンプルを収集し、ESGと財務情報の相関性を調査した研究(2021年発表)によると、以下のようなインパクトのある企業価値の創造を示唆しました。

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出典:エーザイ 価値創造レポート2021 p.58より引用  https://www.eisai.co.jp/ir/library/annual/pdf/pdf2021vcr.pdf
PBR=1株当たり純資産の何倍の値段が付けられているかを見る値

一般的にSDGs/ESGに取り組むと、投資家の評価が高まり、顧客には良いイメージのブランディングができ、そうした企業で働いている従業員の意識やモチベーションも向上することがメリットとして挙げられますが、このような中長期的なインパクトを考えると、もはや取り組みをはじめないと、企業の存続可能性にも影響を及ぼすと考えてもオーバーではないと思います。

取り組むとしたら、気をつけたいリスクは何か?

取り組みをはじめる時は、以下のポイントに気をつけてください。

・正しく理解する
・小さな活動から始める
・正しい言葉をつかう

限られたリソースで会社の経営とSDGs/ESGに貢献をするためには、誤った解釈でコミュニケーションを設計しないことが大切です。企業の発信するメッセージと異なるコミュニケーションやアクションは、場合によって批判の対象になります。また、小さな活動から始めることでコストを抑えられ、継続的な取り組みへのハードルが低くなります。

環境問題に取り組んでいるように見せる行為を「グリーンウォッシング」や「SDGsウォッシュ」と呼びます。SDGsウォッシュは英語で「ごまかし」「粉飾」を表す“whitewash”と「SDGs」を組み合わせた造語で、ヨーロッパで使われ始めている言葉です。SDGsという言葉の響きによって、実態以上に「社内のため」「社会課題とのかかわり」を連想させるコミュニケーションを意味しています。間違っても自社の取り組みがこれらの言葉で表現されることがないように、正しい言葉をつかうことが重要です。

「ヴォーグ(VOGUE)」などを発行する米コンデナストは、4月のアースデーに、パッケージのサステナビリティをめぐる用語の使用について再考しました。
“地球に優しい”“環境に優しい”“エコフレンドリー”“生分解性”といった表現や“リサイクルが可能なプラスチック”という言葉の使用をやめるなど、まずはパッケージにまつわる言葉から再考し、段階的に成分に関する用語も見直していくとしています。

取り組みの手助けになるツール

SDG Compassは、国連グローバル・コンパクト(UNGC)など3つの国際組織によって作成された、企業がSDGsを経営戦略に組み込み、実行していくためのガイドラインです。企業がSDGsを活用するために、考え方のフレームワークや学習ツールなどを提供しています。

GRI, United Nations Global Compact, wbcsd. (2016) “SDG Compass SDGsの企業行動指針 -SDGsを企業はどう活用するか-.”

この他、ディスクロージャー&IR総合研究所が調査したJPX日経インデックス400(2019年11月現在)の3月末決算の会社(303社)を調査対象とした調査対象会社のうち、SDGsの文言を有価証券報告書に記載している会社は82社(100件)あったと報告しています。他社の有価証券報告書にも取り組みの参考にできる要素がありそうです。

企業ブランディングやコミュニケーション戦略は、SDGs/ESGと同じく取り組みを開始したらすぐに効果が得られるものではありません。
多くの日本企業におけるコミュニケーション戦略はSDGs/ESGおよびそれと一体的に検討されている経営戦略とは切り離されていて、想定内リスクの対応に留まっているのが実情です。
今後は、トレンドとしてのSDGs/ESGとそれに関連して新たに出現するリスクを意識し、コミュニケーション戦略に取り込む必要があります。あらゆるリスクを余すことなく予見することは不可能なので、レジリエンス強化にも取り組むことが経営者に求められています。

【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

PR会社(レイザー株式会社)代表 民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。SDGs/ESG視点からの「攻める」コミュニケーション戦略と、「守る」レピュテーション・リスク管理の2軸から広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開。

内容についてのご意見やご質問はinfo@razer.co.jpにお願いします。

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