見出し画像

PR・IRプロのための最新ESGコミュニケーショントレンド

注目が高まるESGに関して、企業はこれまで以上に多くの情報を発信しています。トピックは多岐にわたりますが、PR、IR、その他コミュニケーションの専門家は、ESGコミュニケーションのためにトレンドをキャッチする必要があります。
今回は、日本国内で発表された最新の意識調査と、10月に米PRニュースワイヤーで送信されたプレスリリースの中で、ESGメッセージを発信した好事例についてご紹介します。

ESGの意識調査(国内)

電通PRコンサルティングの企業広報戦略研究所が『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』を、11月に発表しました。調査では企業の「ESGレピュテーション(評判)」を測定しています。
調査結果のポイントは以下。

1.ESGレピュテーション業界ランキング1位は「G:ガバナンス」が高い「損保・生保・商社」。2位「海外自動車・自動車関連部品」、3位「繊維・化学・日用品」は「E:環境」の割合が最多。
生活者1万人に対して、ESGを知っているかを尋ねたところ、約3人に1人が認知していることが分かりました。

2. ESG項目別の認知1位は「多様な生活者に配慮した商品・サービス・事業の展開」
ダイバーシティの認知が広がり、多様化する社会に適応した商品・サービス・事業が増加し、生活者の選択肢が広がってきたことが認知されていると推測できます。

3.企業のESGの取り組みに対する認知、20代が全項目でトップに
20代はESGの中でも「S:社会」の項目に関心が高いという結果が出ました。

電通PRコンサルティング『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』結果より

4.ESGに関する取り組みの認知経路では、「メディアの番組・記事」の接点が最も高い結果に
メディアでの報道がESGに関する取り組み認知のカギになります。


電通PRコンサルティング『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』結果より

5.4割超の生活者がESG/SDGsの取り組みを認知後に行動
  具体的なアクションは「ウェブサイトの閲覧」(17.0%)がトップ。


電通PRコンサルティング『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』結果より

6.SDGsの認知率はついに90%超え
  コロナ禍が継続する中、最も関心の高いSDGs項目は2年連続「すべての人に健康と福祉を」


こうした生活者の関心を踏まえ、ESGコミュニケーションを戦略的に取り組んでいくことが企業価値の向上においてますます重要になると思われます。次は情報開示の時に、参考にしたい海外の事例をいくつかご紹介します。

ESGコミュニケーションの海外好事例

1.  ESGの "E(環境) "に注目した好事例
イエール大学の気候変動コミュニケーション・プログラムは、プロジェクトの中で、アメリカ人が地球温暖化について関心があり、気候変動対策が支持を集めることがわかりました。成功した事例として、次の2つのプレスリリースを紹介します。

(1)「ナパバレー・ヴィントナーズのメンバーが森林再生と山火事復旧のための資金調達を開始」
世界中のワイン愛好家が、ナパバレーの未来を守るための環境保護活動に貢献できることを発表しました。

(2)「Ocean's HaloがSmile Compostable Solutions®と提携し、持続可能なブロスポッドを提供」
製品に含まれるプラスチックの使用を減らし、次世代のために海を保護するOcean Haloの活動を強化すると発表しました。

Ocean's Halo Quick-Cup Broths


これらの事例は、企業が読者のインサイトを理解し、明確な行動への呼びかけやすぐできる行動などの情報によって、消費者に参加する方法を提供しています。リリースの成功のポイントは、 どちらも「なぜこのニュースが重要なのか」を明確に答えられる簡潔な見出しを用い、ネット上で検索しやすい重要なキーワードを含んでいることです。さらに、ナパバレーの事例では30秒の動画で分かりやすくキャンペーンの重要性を強調し、Ocean's Haloは製品画像を使って読者にインパクトを与える具体的な方法を示しています。両リリースとも、本文中のリンク数を工夫し、最も重要なリンクを、リリースの高い位置に配置しています。また、ナパバレーは時間がない読者のために、リリース内に箇条書きと戦略的な太字を取り入れ、主要な要点を強調しています。 

2.  具体的な数字を表記した好事例

具体的な数値をプレスリリースで共有することは、正当性を構築し、顧客やその他のステークホルダーへのコミットメントを向上させるために、非常に有効的です。ここではESGのS(社会)部分に割り当てられた具体的な数値を開示した2つの事例を紹介します。

(1)「ファースト・エナジー社、約1,000本の木を寄贈、10月に植樹を実施」
ファースト・エナジー社がクリーブランド・メトロパークと協力し、植樹を実施。この取り組みは、二酸化炭素排出量を削減し、天然資源の責任ある利用を促進し、持続可能な実践を進めるための同社の重要な取り組みとなっています。

(2)「フロリダブルーが食料安全保障プログラムへの投資を1,600万ドル以上に拡大」
フロリダ・ブルー財団が、飢餓と食料不安の撲滅に取り組む地域プログラムに373万ドルの追加助成金を授与。この資金提供により、フロリダ・ブルーとその財団による食糧安全保障プログラムへの投資は、過去4年間で総額1600万ドル以上となりました。

このふたつのリリースは簡潔な見出しですが、注目させる確実な方法である「数字」を取り入れています。両社とも小見出しで文脈を補足し、重要なキーワードや数字を盛り込むことで、読者をコンテンツに引き込む工夫をしています。


もし、あなたの組織がESGに取り組んでいるなら、是非そのストーリーをこれらの事例を参考に伝えてください。今はスポットライトを当てるチャンスといえます。賢くこのトレンドに乗りESGコミュニケーションを実施してください。

【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。コミュニケーション戦略における「攻め」と「守り」の両軸から経営広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開する。

内容についてのご意見やご質問はinfo@razer.co.jpにお願いします。

参照元:
電通:生活者1万人を対象とした『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』結果
The Top ESG Trends for PR and IR Pros to Know from October
Napa Valley Vintners Fundraising Begins for Reforestation and Wildfire Resiliency Efforts
Ocean's Halo Partners with Smile Compostable Solutions® for Sustainable Broth Pods
FirstEnergy to Donate, Plant Nearly 1,000 Trees at Cleveland Metroparks Euclid Creek Reservation in October
Florida Blue increases local investments in food security programs to more than $16 million

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?