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【映画感想】ボーンズ アンド オール

ティモシー・シャラメ主演の純愛ホラー映画と聞いて観に行きました。
今回の映画感想はルカ・グァダニーノ監督作品の『ボーンズ アンド オール(2022)』です。


あらすじ

生まれながらに人を喰べる衝動を抑えられない18歳の少女マレン。彼女は父親のフランクと共に平凡に暮らしていたものの、その衝動のせいで事件を起こしては逃げる生活を繰り返していました。「何故自分は普通に生きられないの?」「母親はどんな人?」フランクに聞いても何も話してはくれません。マレンは謎を解くために顔も知らない母親を探す旅に出ますが、その道中で人喰い同族と出会い―――・・・


純愛にフォーカスを当てた恐ろしくも美しい物語

カニバリズムとなるとゾンビや人喰い人種などのパニックホラーを連想してしまいますが、今作は純愛にフォーカスを当てた珍しい作品です。被害者視点ではなく、加害者視点で物語を描いたところも斬新ですね。
1980年代のアメリカを舞台にしたロードムービーの雰囲気、マレンと青年リーが惹かれ合っていく過程、流れ出る鮮血、何もかも神々しいまでに美しく描かれています。この映画をレンタル屋さんに置くとして「これはホラーなのかロマンスなのか」と悩んでしまうような、とにかく枠にはまらない作品ということは間違いないです。


人喰い族の特性

主人公のマレンは人喰いの本能があるものの、旅に出るまで同族との交流はありませんでした。そのためカニバリズムは反社会的と捉えており、他の人喰い同族と関わることに嫌悪感を抱いています。
青年リーはそんなマレンが放っておけず、時には家族のように寄り添い、時には女性として愛そうとします。しかし彼もまた人喰い同族としての大きな闇を抱えておりうまくいきません。それがとても歯がゆくて、切ない気持ちにさせます。
タイトルにもなった「Bones and All」という言葉は、旅の道中で出会った人喰い同族が発したものです。これが何を意味するのかは、物語を最期まで観れば分かるように作られています。


個人的な感想

ホラー系はかなりの数を観てきたつもりですが、ここまで美しく人喰いを表現している映画は初めて観ました。リー役のティモシー・シャラメと監督は『君の名前で僕を呼んで』以来の再タッグなのですが、期待を裏切らない仕上がりだったと思います。
純愛の描き方もとても良くて、むやみやたらにイチャイチャするのではなく、運転を交代しながらドライブしたり、一緒に録音テープを聞いたり、寝ている相手が起きるまで寄り添ったりと、何気ないふたりの気遣いが観ていて微笑ましかったです。人喰いでなければごく普通の青年少女なのだと思い知らされました。
「これが純愛なのだろう」と片付ければ綺麗に終わるのですが、どうも私はサリーやマレンの母親、他の人喰い同族が引っかかって仕方がありません。異常な行動ではありましたが、彼らもまたマレンやリーと同じく誰かをひたむきに愛した純愛者だったのではないかと。鑑賞済みの方は彼らの存在をどう感じたでしょう?

とてつもなく孤独で、救いようのない美しい世界を描いた純愛ホラー作品『ボーンズ アンド オール』おすすめです。とはいえカニバリズムのお話なので年齢指定はR18+ですし、不気味で恐ろしく感じる描写やスプラッター要素もあるため苦手は方は注意が必要です(『羊たちの沈黙』『ハンニバル』が観れるのなら大丈夫だと思います!)

Bones and All - fanart @rayu9595

らゆらゆ

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