「本当の中国語」とは
たまたま開いたサイトに気になる表現がありました。
わたしは「本当の中国語、いわゆる北京語」という表現が気になりました。果たして「本当の中国語」は北京語なのか。そもそも「本当の中国語」ってなに?
北京語は、中国語の方言の一つにすぎません。中国語の公用語でもありません!中国の公用語は「普通話」というものです。ただ普通話と北京語がとても似ていること、北京語を話す人が圧倒的に多いことから、「本当の中国語=北京語」と書いてしまったのでしょう。補足すると、普通話も「本当の中国語」ではありません。
言語の定義はとても曖昧なものです。なにか正しい言語(標準語)があって、そこから偽物の言語(方言)ができたわけではありません。また、言語の違いというのは不明確なものです。混沌と存在することばを似たもの同士で集めて、人間が勝手に一つにまとめたものを「言語」と呼んでいるにすぎません。法律とかニュースとか教科書とか、便宜上一つの言い方に統一した方が楽なので、「標準語」や「公用語」、「国語」というものが設定されました。しかし、これはあくまで便宜上のものあって、それが正しい使い方というわけではありません。
ですから、「本当の言語」というものは存在しない。または、話されているもの全てが「本当の言語」になります。
そんな細かいところ気にするな、と思う方もいるかもしれませんが、これはものすごく重要なことです。「多くの人が話している言語が本物だ」とか「教科書に出てくる言語が本物だ」とかいう信念が蔓延ると、どんどん言語は統一化されます。方言は死に、そのうち日本語もなくなり中国語と英語くらいしか残らないんじゃないですか。
それに、広東語とか北京語以外の中国語を話す方がこのサイトを見たらどう思うでしょうか。その方の話す中国語は偽物だということでしょうか。本当に失礼極まりないと思います。
調べたらこのブログを書いている会社、中国語教室を開いているそうです。しかも「中国の文化や風習にも触れられる」と謳っています。ことばのプロフェッショナルで、さらに文化を重んじている方がこんな言い方をするなんて、少し悲しくなりました。
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