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創造性の社会〜AIが創造性を手にする3つの要素とシナリオ

創造性って、ヒトの社会において、どのようにして生まれるのでしょう?
そして、AIが創造性を手にするには、どのようなシナリオがあるでしょう?

創造性とAIというよくあるテーマについて、「創造性は社会が生む」という視点で考えてみます。

創造性の3つの要素

創造性について、社会というマクロな視点で見たとき、3つの要素があり、各要素で要件がすべて満たされる必要があるようです。(M. チクセントミハイ, 2016, クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学)

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1. 創造性を発揮する音楽や数学などの「領域
2. 創造性を評価する評論家やコミュニティーなど「
3. いわゆるクリエイティブな人「個人

創造性というと、アインシュタインやピカソなどの「個人」に注目して、その人の秘められたストーリーを求めがちですが、それだけで十分ではありません。「領域」や「」も重要です。

1. 領域 (Domain)

まずは、創造性を発揮する領域が必要です。それは、アートやサイエンスという大きな枠組みから、アートの中の音楽・美術など。さらには、音楽の中の演歌・ポップ・クラシック・ジャズなど様々です。

人は知らない領域では創造的になれないです。演歌の才能がある子供がいたとしても、演歌という領域を知って独特な歌い方を習得しなければ、創造性を発揮することはありません。

2. 場 (Field)

つぎに、創造性を評価する場が必要です。それは、アートであれば観客や評論家、サイエンスであれば研究コミュニティーや学術雑誌などです。

ピカソやアインシュタインが、ものすごい創造性を発揮したとしても、それを評価する場がなければ、創造性があるとは言えないです。

3. 個人 (Person)

もちろん、創造性の元となるアイデアを生んで実現する個人が必要です。

個人がどのように創造性を生むかは、前回のnoteをご参考ください。

AIが創造性を手にするシナリオ

さて、創造性の3つの要素をもとに、社会でAIが創造性を手にする未来のシナリオを考えます。

未来を考える上では、リスクの大きな要素を軸に複数シナリオを作ることがコツです(シナリオ・プランニング 2013)。リスクの大きいのは「領域・場」の選択で、

● 領域・場が既存or新規
● 領域・場の創造性の基準が曖昧or明確

という軸で、3つのシナリオを考えます。

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A. アートでロマンティックが止まらない

まずは、AIを開発するにあたり、既存の「領域」を探します。例えば、創造性というものから連想しやすいアートの領域で、で美空ひばりさんを再現したり、マンガで手塚治虫さんの新作を描きます。AI開発者にとってのロマンかもしれません。

そして、その領域で「個人」の創造性を実現するAIの開発に挑戦します。

問題は、これだけでは創造性のすべての条件を満たせないこと。
さいごに、「」で創造性を認められる必要があります。例えば、美空ひばりさんAIを紅白に出場させたり、手塚治虫さんAIのマンガを連載して、視聴者・読者から認められること。さらに、歌やマンガのコンテストに出場して審査員から評価される必要もあるでしょう。

しかし、アートは創造性の基準が曖昧なので、評価されるまで険しい道になりそうです。

B. 違いのわかる男

人とAIのアウトプットを比較する際に、創造性の基準が明確で違いのわかる「領域・場」だと、AIの創造性が認められやすいです。(コーヒーの違いを理解できるのは大人の男の証・・・的な)

例えば、サイエンスの領域が良さそうです。先日、Facebookは、ニューラルネットワークとデータだけで数式を解いたようです。その延長線上で、人が解けていない領域の数学の未解決問題をAIが解き、それがノーベル賞等の場で評価されれば、多くの人が創造性を認めるかもしれません。

ただ、「サイエンスには創造性がない」というある種の偏見もあり、完全なブレークスルーにはならないかも。(人間のノーベル賞受賞者に対して、創造性がないとは誰も言えないはずですが)

C. 時代をつくる女

既存の領域から飛び出し、AIならではの新しい「領域・場」を開拓することで、AIの創造性が認められるかもしれません。(近年誕生したインスタグラマーとして活躍する女性は新たな時代をつくる・・・的な)

既存の領域・場における慣習・しがらみから解放されるという点で、AIの創造性が認められやすそうです。

例えば、テクノロジーの領域で生まれる創造性がありそうです。僕が経営のお手伝いをしているGateboxは、バーチャルなキャラクターと生活する世界を目指しており、そのキャラクターとのやり取りに一部のコアなユーザーさんは創造性を感じるかもしれません。

ただ、立ちはだかる壁もあります。その新しい「領域・場」はまだ存在しないので、具体的にどんな「領域・場」かを想定しづらい。また、既存の「領域・場」と比較して新しさが認められなければ、そもそも「領域・場」として認められません。

とはいえ、未来を開拓する人たちは、このシナリオにも挑戦するのでしょう。

さいごに

シナリオを検討するにあたり、初回のnoteで提唱したSTADのフレームワークも参考にして、S:サイエンスT:テクノロジーA:アートの領域のシナリオを考えました。他にD:デザインの領域のシナリオもありそうです。

ちなみに、AIが創造性を手にするべきかに関しては、個人的には賛成でも反対でもなく、また、そんなAIの開発に僕自身が取り組むのは、今のところあまり興味がありません。最後に言うのもアレですが (笑


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