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商業施設Noteの日常 粗食編

 乳白色のドリンクがコップに一杯、それから握りこぶしよりも一回り小さい焦げ茶色の丸いパンが一つ。それが黒尽くめの、バー・メキシコでの今日の昼食だった。それを見て目を丸くして突っかかる中国清代風の服装の男。
「おいおいおいおい、レイヴンこれが昼飯って冗談きっついぜおい」
「待ってくれホイズゥ、確かに見た目は完全にディストピア飯だが、この食品はこれでまとめて一食分の栄養価を満たせる優れもので」
「ちっがーう!俺が言いたいのはそういうのじゃなくて、こう生きる喜びとか!美味いもん食ってやる気出して行こうって話で!辛い麺食えない人生とか何の冗談だよ!」
 テーブルをバンバン叩いて憤激するホイズゥ。確かに彼の言うことも一理ある。おいしい食事は生きる活力の元だ。
「そうは言うがな、最近贅沢し過ぎなので、ちっとばかし粗食に立ち返らないといけない。禅の都合で」
「Oh……Soul・食……Zen……じゃあ今日はそれで良いから、今度ワッパー食いに行こうぜ」
「ああ、わかっ……」
 その時、バー・メキシコのウエスタンドアが勢い良く開かれ、壁をぶっ叩いた。
 入り口に立っていたのは、ふんわりとした質感の豊かなブロンド、フリル多めの華やかで可愛らしい意匠に、まつ毛の長さが目立つ麗しい顔立ちの少女。紅い花の髪留めをつけた彼女は、両手に銀のお盆を持ったまま、まっすぐ黒尽くめのところまでやってくる。
「ダメですよレイヴンさん、そんな質素な食生活は!こちらの方の言う通りです」
「あ、はい」
「いやいやいや、お前さん誰よ!バー・メキシコではあんま見ない顔だけど」
「あ、私エイプリルと申します」
 自己紹介もそぞろに、エイプリル、春の意を名乗った彼女は丁寧に銀盆をテーブルに置く。姿を現したのは、これまた華やかに、今風に言うとインスタ映えのする昼食。ハンバーグと花丸目玉焼きに、彩りのいいサラダ。精緻な切子細工の藍の器には、種々のフルーツを土台にした上にバニラアイスがチョコンと乗っかっており、丁寧な作業が伺えた。
「という訳で、どうぞ召し上がってくださいまし」
「あ、ああ。ありがたくいただきます」
 主食が欠けているのは既に手元にあるが故か。黒尽くめはパンを割って真ん中にハンバーグ、目玉焼き、後種々のサラダを挟むと一口にかぶりつく。
「うん、美味い」
「それは何よりです!」
 星の怪生物もかくやという速さで平らげると、黒尽くめは春の少女に向かって深々と頭を下げた。
「ごちそうさまでした。ありがとうございます」
「いえいえ、これからもちゃんと食事を取ってくださいね!」
 済んだ食器を回収すると、にこりとウィンク見せて、春の少女はバー・メキシコから去っていった。
「……なんだったんだ、おい」
「俺にもよくわからん、だがまあ、親切はありがたく受け取らないとな。ただまあ」
 思いの他ボリュームのある食事になってしまった。黒尽くめは重い腰を持ち上げ、太刀を腰にさす。
「運動してくるわ」

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

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