見出し画像

魂の灯 -66- #ppslgr

銀の長塔を骨組みとして顕現した暗黒貴婦人、その身からは蜘蛛の網めいて無数の糸組を撃ち出しネットワークを形成。メロンの網目にも似た図形を描きながらより巨大なドームを作り出せば、そのまま地上へと向かって糸を張り巡らせ領域を拡大。まるで多頭釣りのごとく人間が糸に絡め取られ取り込まれていく。加速度的に魔の領域が広がっていった。

イクサ・プロウラは自らにもまた迫る蜘蛛の黒糸を斬りさばいては、身をそらし暗黒貴婦人の本体中枢へと空をきって踏み込む!背から瞬く蒼光!その巨大さのあまり鈍重な貴婦人の懐に一瞬で飛び込んだ!しかして、腰だめにかまえていた大太刀は貴婦人に食い込む寸前でピタリと止まった。

「コイツ……!」

ニューロン接続とモニタを通して、レイヴンの眼には暗黒貴婦人のドレス上に星空の様に光芒がまたたいている事が視認されていた。もちろんオシャレなどではない、一つひとつの輝きが生命反応……すなわち取り込まれた一般人である。太刀が止まったタイミングで四方八方から取り込まんと黒糸を伸ばす貴婦人に対し、魔術めいて刀の切っ先を閃かせて打ち払う!そのままバク宙後退!

「オホホホホホホ……ヒーローは苦労するでオジャルな?」
「そんなカッコいい生き物じゃないぞ、俺はな」

頭部を模した箇所を三日月の様に開き笑う暗黒貴婦人に対し、油断なく大太刀を青眼に構え見返す。もはや辺りは完全に暗黒の帳に覆われた匣も同然であり、その中にあってイクサの推進機だけが星めいて輝いていた。

「お前はあのウラナリ坊やではないな。あの暴走小坊主は……そうだな、東京湾か」
「オッホ、今更したり顔で語っても無意味、無意味。なんじはすでにマロの手中。そしてマロのあるじは宿願をはたさんと行動に移っているでオジャル」
「あのすかした坊やから出てくるキャラか、貴様は」
「オッホホホホ、ペルソナとは素顔とは全く別の側面を持って当然の物。マロは紛れもなくあるじの一側面にオジャレば」

マロ喋りの暗黒貴婦人が指先を内側に曲げると、再び黒騎士に向かって暗黒蜘蛛糸が収束する!しかして、糸の大群は機体に触れるよりも手前で、青く輝くハニカム構造障壁によって消し飛んでいった。その様に暗黒貴婦人は扇子を開き三日月の口の端を隠す。

「実にオロカ。なんじはすでに孤軍であり、マロはあるじを介してこの都市の民草全てを掌握しつつあるのでオジャル。たった一人で数百万もの物量に抗するのはじつにアサハカというもの」
「それで?」
「この期に及んでまだ現実が見えていないようでオジャル。オロカなサムライよ、なんじの負けよの」

暗黒貴婦人マロの言葉に、イクサの背部推進機は極星よりもなお明るく輝いた。イクサ・プロウラの全身には血脈めいた蒼のエネルギーラインがまたたき、頭部のツインアイは走査線を伴って発光する。

「お前はただのスカムだ。お前達がどれだけ哀れな連中を直列電池にしようが、その全てを斬り伏せて俺が……」

そこまで言った後、言葉をきって男は言い直した。

「俺たちが、勝つ」

【魂の灯 -66-:終わり|-67-へと続く第一話リンクマガジンリンク

ファンタジーミステリー小説も連載中!

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日18時更新!
ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #毎日更新 #毎日note

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL