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黒衣のメシテロリスト

「カチコミだウマーッ!?」

 深枡組の極道者が、組長室になだれ込みざまに絶叫と共に倒れる。口にはねじ込まれたドーナッツが。極道者達は異変にチャカやドスを抜き、闖入者に襲いかかる!

「ブッコロ美味い!」
「ナメテンじゃウメェエエ!」
「死にさらウマすぎ!」

 戦叫と共に襲いかかった極道者達は、次々に寿司、ハンバーガー、マカロンをねじ込まれ美味失神!極道者全滅!怯む深枡組組長、多々丘!笑う黒衣の闖入者!

「クックックッハーッハッハッハッハ!」
「テメェ……一体ドコのテッポ玉だ?」
「俺の主は俺だけだ、多々丘益治。今日ここに来たのは他でもない、貴様をわからせに来たのだ!この俺の、このメシで!」

 多々丘の眼前、上等なヤクザデスクにオカモチが叩きつけられた。イートorデッドの選択が多々丘に突きつけられる。

「さあ喰らうがいい!お前が屈すれば俺の勝ち!耐えればお前の勝ち!勝負だ!」

 オカモチオープン!中から出てきたのは……白おにぎり、焼きおにぎり、豚汁、そして大根の浅漬!

(クソッカタギがナメやがって……やってやる!)

 たかがおにぎり、そんなに美味い訳がない。怒りを胸に米の塊にかじりついた多々丘の思考は一瞬で吹き飛んだ。米、塩、炊き加減、全てが絶妙すぎるそのおにぎりはまるで旨味のダイヤモンド。夢中ですすった豚汁は赤味噌のコクと出汁のハーモニーにネギと豚の甘み…!それを浅漬が正確にリフレッシュした後に香ばしい焼きおにぎりのおこげが蹂躙する!感動のフィナーレが多々丘を襲った!

「美味い……旨すぎる……」

 勝負あった。多々丘が白目昏倒降参した後、恐るべきメシテロリストはシノギアタッシュケースを奪い去っていき、後には失神極道者だけが残された。橘刑事が連続メシテロ行為を追って現場にたどり着いた時には、何もかもが終わっていたのだ。

「おい!奴は何処に行った!」
「能岡椎蔵……グフッ」
「能岡氏!あの能岡氏か!」

【続く】

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