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那由多に至れ

 世界の果ての、そのまた果てを目指せ。

 そんな大航海時代じみた煽りを真に受けて、在地球銀河の端っこの、物好きですら近寄らない枯れた果てた星の衛星軌道をぐるりと囲むほどに、命の煌きが集結した。いずれも名だたる宇宙ソラの船乗りたち。銀河流星スモウダイン、一億二千万シャーク、自称七代目エチゴヤ、宇宙海賊マグロ組、深淵またぎのバハマタ、星摘みグラムチカなどなど……悪名の博覧会だ。

 アムウ少年はそんなひしめくろくでなし共の船の真っ只中、骨董品たる星虹アウローラに抱かれて出発の時を待ち構えていた。BGMはレース主催デブスターの演説。

「諸君!いまや宇宙に謎はなく、あるのは銀河の再生産などと愚かな学者どもが断言して久しい!しかしそれを、一体誰が身を持って証明しただろうか!」

 アムウは白々しい演説を聞き流しながら、自艦の点検を流す。枯れているからトラブルが少ないくらいが取り柄の船。流れる演説は、果てに何かが、あると確信している少年にとっては、どうでも良かった。

「ルールは唯一つ!生きて誰よりも遠くに至ったものが勝者だ!それ以外は好きにしたまえ!」

 出発は本日十二時ジャスト。残り五分。

「それでは出発の時だ!諸君、幸運を祈る!」

 残り三分。星を取り巻く光が円冠めいて飾り立てる。

「マスター、OKです」
「そう」

 残り一分。アウローラの言葉にそっけない返事を返す。

「スタート!GO!GO!GO!」

 口火が切られる寸前に、アウローラは舞い上がった。直後に、隣同士だった船が同士討ちで爆散する。だが、それすら些事だ。世界が白く染まって、寄り集まっていた船は木っ端のように吹き散らされた。背後の星が、まるで里芋みたいに貫かれて爆散する。

「状況!」
「未知の攻撃により、惑星ミクダリが崩壊しました」
「全速離脱!」
「やってますよ」

 光の雨を、蛇行運転にて奇跡的にくぐり抜ける。宇宙捕鯨船があっさり消し飛ぶ。

「主催め!」

【つづく】

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