イドラデモン・アニヒレイト -54- #ppslgr
膨大な熱量爆発によって少なくない量のボット群が焼け融け、構造的意味を持たない融解物となる。だがマグマのごとく白熱した融液は無機質な白い大地を飲み込んでいき、いくつもの層を貫いていく。
「ぬぅぅうううん!余は負けんぞ!今一度現世に舞い戻ったこの機会、逃してなるものか!」
「しつこい野郎だ!」
矛盾広大空間の最中、ボットの盛山で形作られた巨人の姿はそこにはなかった。暗幕ガラスに覆われたビルめいた脚、瓦礫と残骸で無理やり維持した胴体に、右腕は緑豊かな樹林帯が、左腕は鏡面タブレット群。そして頭部は無数のカメラで人体を模し、アギトには細長いカタナめいた牙を無数に整列させた異形の存在が顕現していた。
「余の栄華!繁栄!再起!何者にも邪魔立てはさせぬ!」
「ほっほう……どうやらおヌシには因果応報っちゅー概念はないようじゃな。ま、良かろ。苔むした古代の亡霊に、そんなもん期待する方がおかしいからの。故に、じゃ」
自身の百倍の体積は軽くあるであろう混沌迷宮巨人に対し、アステリオスは肩に担いだ斧を正面へ構え直し恫喝する!光綾なす斧が一喝に呼応し、周囲に白き波動を放った!
「おヌシは今ここで完全完璧な更地に変えて、野望ごと粉砕しちゃる。疾く地獄に戻って内職を再開するんじゃな」
「ふざけるな、凡夫風情がぁ!」
怒りのままに迷宮巨人はその緑と鏡の双腕を振るい、自身からすれば小人の様なアステリオスへとつきだし叩き潰さんと打ちつける!大気を震わす轟音が、マイクを通じてこちらのスピーカーを揺るがした!
だが、巨人の両腕は小人の両腕によって真正面から受け止められていた。両手斧を手前に突き立てたアステリオスはなんと素手でもって、圧倒的質量差の巨兵を真っ向から止めたのである。
「むぅん!?」
「質量押し、まーそう悪い攻め手じゃないんじゃが、ちっとばかし相手が悪かった!」
こちら二機がカットアップする必要さえ、大小二体の拮抗状態には生じていない。何故ならば、二体が組み合ってすぐ巨人側が身動き取れずにもがき初めたからだ。
通常であれば、百倍差の体積差を持つ相手と拮抗するなどありえない話である。だがソウルアバターに標準搭載された物理法則制御機構、ベクトルドライブがその不可能を覆していた。一見絶対に抗しようがないサイズ差の相手に対し、アステリオスはまるで堅固なる要塞の如く立ちはだかる!
「ぬぐぅ!離せ!離さぬか下郎!」
「カッカ!そう頼まれたならば離してやろうもん――ただし、ぶん投げた後でじゃなぁ!」
大気が凍りついたが如き一瞬を越えて、迷宮巨人がなんと浮き上がる!その様は冗談みたいな光景だが、間違いなく現実に起こっている事態だ。巨大建築物よりなお壮大な混沌構造物が空高く、スペースシャトルの打ち上げの如く吹っ飛んでいく!
「ヌウウウウゥゥゥゥリャアアアアァァァッ!」
「何だ!何が起こっている……ヌワーッ!?」
勢いのままに昇天する迷宮巨人に対し、イクサの推進力を引き上げて食らいつく!
【イドラデモン・アニヒレイト -54-:終わり:その-55-に続く】
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