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戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-4-

「ポイントに着いたぞ~」
「あいよ」

 戦艦「武蔵」がその巨体を海上に留める。この威容の中に男が二人、やる事はマグロ釣り。如何にも大仰だが、ちょいちょい海賊にちょっかいかけられた事を考えると今時の海釣りでは自衛は必要か。

 艦上にマウントされた釣り竿の傍、配置につく。事前に調べてきた感じだとマグロが釣れるのはちゃんとした船と設備でも精々1年に一回とか(もちろん漁に出る頻度が趣味の釣人と漁師では段違いであり、上記の話は趣味の釣り人の話だ)なので、今日も恐らくはボンズ、ならぬ坊主で終わる可能性が高い。

 釣り竿に仕掛をセットし、蒼い海面へと送る。武蔵にはちゃんとマグロ一本釣り用の設備が改装により搭載されているようで、甲板の一部には瞬間冷凍用と思しき設備もあった。少なくとも万が一にマグロが釣れて凍結できずダメにするなどという事態はなさそうだ。

 椅子に着座すると電子書籍端末を手に取る。長いたたかいになるだろうし、どうも俺は無為に時間を過ごすのが苦手だ。座禅はまた別なのだが。

 事前にダウンロードしておいた「柳生一族の陰謀~サイボーグメカニンジャ編~」を選択すると冒頭に目を通した瞬間であった。

「おい!R・V!掛かってるぞ!」

 なんと、いわゆるニュービー・ラッキーというヤツか?A・Dの声にすぐさま電子書籍端末を懐にしまい込み、釣り竿に手をかける。素人目にも分かるほど、竿のしなりが深い。大物だ。

「せめてカツオとかであってくれよ!」

 ゴムブーツとかがかかってた時の虚しさを想像するとせめてちゃんとした魚類がかかっていることを望みたくなるという物だ。

 素人ながら悪戦苦闘しつつ、暴れる竿を操りマグロ?と格闘する。想像以上にデカく、質量を感じる。竿が折れない事を祈るばかりだ。

「R・V!その竿のリールは電動式だ!」
「なんとぅー!?起動はここか?」
「そこだ!手動でも巻けるがリールは自動の方が速い!」
「わかったぜ!」

 電動リールの起動シークエンスを……と言ってもスイッチを入れるだけだが、ぽちっと起動してリール巻きが始まる。高速でリールが巻かれ、ぐいぐいかかった魚が海面から勢い良く引き上げられ、戦艦の高い甲板へと釣り上げていく。視認出来るかなりのボリューム感とこの形状は……

「ま」
「マ」
『マグロダーッ!?』

 なんと、開始十分もせずに一匹目が釣れてしまった。はやい、いくら何でも早すぎる。だが釣れないよりはよっぽどいい。釣り上げられたマグロは甲板へと引き上げられ、処理台の上へと送られていく。もがくマグロ。すまんなほんとうにすまん、恨むならブッダかちょろい自分を恨んでくれ。

「いよーっし!チャチャっとしめて冷凍すっか!」

 用意の良いA・Dは先の尖った鋼鉄の棒らしき道具を取り出すと虚無の目をしたマグロへと向ける。アレで急所を突いてしめるのか。まだまだ知らない事は多いな。

 だが、その時であった。

「こ、ころさないでください」

 か細い人語にはたと手を止めるA・D。間近で見守っていた俺も流石に目を丸くする。一度目を見合わせ、再度マグロを見、再び視線を合わせる俺達。

「しゃ」
「シャ」
「シャベッツアーッ!!!?」

【戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-4-終わり:-5-へと続く

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