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魂の灯 -92- #ppslgr

しかして、無限にも思われた激闘にも徐々に終わりの影が這い寄ってきた。
再生力の供給源を絶たれた暗黒虚神は一打、一打の激突を重ねるほどにその動きは緩慢になり、拳を合わせる程に装甲面が日焼けた皮膚めいて剥がれては、海面を激しく打った。

いまや、底なし沼よりも深く世界を取り込まんとした虚神の神威は見る影もない。夏の日向に放り出された側溝のヘドロのように、見る間に乾き、ひび割れて敵対者の一撃に対応できなくなりつつある。

さりとて、相対する翠緑巨神もまた、万全無事ではない。
美しかった全身の装甲は汚泥と海水にまみれて薄汚れ、虚神が生やしたる数多の凶器をその身で受け止めた結果が隙間を見出すのも難しいほどに破損していた。

「装甲破損率90%突破!骨格の損耗も50%越えてる、このまま行けば行動不能よ!」
「後少し、あとちょっとだけ持たせてくれ!」
「各部火器の維持エネルギーを切って機体そのものに回すんだ。それでもう少しだけ持つ」
「ええ、やるわ!」

瞬間、翠緑巨神の全身に備わった無数の重火器が光を発し、霧散!
発生した余剰出力が機体の全身をバイパスを通して循環し、スクラップ寸前の機体をギリギリで持ちこたえさせる!

「悪足掻きを……!するなああああああぁァッ!」

一方、暗黒虚神はその右腕を天に掲げ膨張、巨大クジラめいたサイズから更に八方に張り出し形成されたそれは、重厚なる盾だ!破れかぶれか、残された力のすべてを込めて、虚神は突貫する!

「へ、へへ……決着、つけようぜ。いい加減よう!」

向かってくる黒い這い寄る混沌、その圧倒的物量を前にして、巨神は自身の身に残っていた砲身を引き抜き、その端を打ち鳴らしてつなぐ。正式な武装ではない、間に合わせのヌンチャクである!両手にヌンチャクの両端握り、鎖を正面に向け仁王立ちす!

「う、お、おおおおおおおおおおおッ!」

二神、激突!空よ歪めとばかりに、巨大質量の衝突が衝撃波を全方位にふきはらし、淀む曇天を一気に吹き飛ばす!踏みしめる海は高波を発し、せめぎ合う盾と鎖はいずれも、譲らぬと軋みをあげてその身を削り合う!

「お、う、ラァァァァァアアアアアアッ!!!」

膠着状態と思いきや、渾身の膝蹴りが虚神、その盾を打った!わずかに身じろぎ隙を見せる!振り上げられるヌンチャク!

「こ、れ、で、終わりだあああああああっ!」

虚神が掲げた尊大なる盾は、真っ二つに打ち砕かれ、その機能を失った。
続いて返すヌンチャクが横から盾を打ち払い、反動によって振り上げられた一撃が盾を越えて虚神の腕を打ち砕く!破砕音と共に弾け飛ぶ腕!

そして無防備となった虚神、その本体を……ヌンチャクが、打つ!打つ!打つ!打つ!打つ!打つ!打つ!そのたびに巨大なる暗黒虚神の存在が砕け、千切れ、削られ、崩壊していく!それでもなおヌンチャクの猛撃は止まらぬ!

「イィィィィィヤァァァァァァァァッ!!!」

瞬間、アンダースローめいた軌道を持って振り上げられたヌンチャクが、暗黒虚神を真下から薙ぎ砕き、頭部を空の彼方まで打ち上げた。
大気圏をやすやすと突破した暗黒虚神頭部が、宇宙より自らの亡骸を見下ろしていた。

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