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いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -28- #ppslgr

紆余曲折の果てに精神的に疲れ果てた俺は、現地政府に記録データの諸々を投げつけ唯一の生存者となった調査隊員を送り届けると、すぐさまA・Kと共に帰国の途についた。

信じ難い事象とはいえ実際に起こった出来事の裏付けのために延々拘束されるのは御免であったし、やるべき使命は果たしたと判断したが故である。
窓口になった自国政府の担当者に対しては今度からはもっと手近な、適任の者を先に送れと釘刺しのメールを送っておく。何でもかんでも俺に投げるなと。

そして帰国後すぐにバー・メキシコに立ち寄った矢先に、あの異界コーンの置き土産を処理しなければならない事を思い出す。森林調査序盤に採取したコーンのサンプルである。

空いていたテーブルの一つに荷を下ろしてサンプルを取り出す。通常であれば防疫対象として持ち込み審査が必要になるところだが、物が危険すぎる為に信頼できる相手に処理してもらうという名目で事前に許可を得ていた。

「やはり無事、か」

指先でつまめるくらいの透明な円筒には、採取した時と変わらぬ様子でコーンの粒が収まっている。おそらくはあの時の唐黍女神の神通力でもイクサの防御壁だけは干渉できなかったのだろう。もし仮にあの時に放たれていたのがマイクロウェーブで、こっちが何の対抗もしていなかったとしたら俺達もただでは済まない所だったが。

お手玉めいてサンプルケースを手元で遊ぶ。宙に舞っては手のひらに落ちるたびにカラカラと乾いた音が鳴った。変化する様子もないので休眠状態にあると考えられる。ならばやるべき事は一つだ。

目当ての人物を視線を泳がして探し求めると、運の良い事にこの場に居合わせてくれたグレーのスーツの、品の良い紳士を呼び止める。

「T・D」
「ああ、帰ってたんだね。首尾はどうだい?」
「何とかなったが今回ばかりは少々疲れを感じた。それで頼みがあるんだが」

言葉を切るとそのまま手元のサンプルケースをT・Dに投げ渡した。当然、手でキャッチする。

「焼いてくれ、それ」
「いいのかい?」
「ああ」
「わかった」

俺の頼みを快く聞き入れてくれると、T・Dは手のひらから超自然の翠炎を生じさせてコーンサンプルを焼いていく。コーンはケースごと瞬く間に燃え尽きれば、灰も残ることなく蒸発した。

「はい、済んだよ」
「感謝する。災いの芽は摘んでおかないとな」
「エッ、今のコーン粒そんな物騒な物だったの」
「ああ、怪獣にもなったし」
「エエ……見たいような見たくないような……」

コーンの怪獣と聞いてドン引きしている彼を余所に、据え付けのクーラーからCORONAを取り出してテーブルに置く。相席してるのは当然同じ帰路で帰ってきたA・Kだが、彼は彼でテーブルに突っ伏して燃え尽きている。

「俺もう当分冒険は良いかも……行くにしてももっと穏便な奴で……」
「次はそうだと良いな」

栓を開けたCORONAに手を付ける事もない彼の様子に苦笑するも、俺の意識はすぐに店内に流れているニュースに引き付けられた。

「本日午後五時頃、正体不明の集団により『タピオカを粗末に扱う人類に対し宣戦布告を行う。タピオカ・ウォーだ』との宣言がメディア各所に送られてきました。政府関係者は情報の収集に努めており……」

俺は耳にした胡乱なニュースを意識から追い出し、スマホの着信を切って拒否すると何もかも忘れてCORONAを呷るのだった。

【いざなうはワールド・コーン・ラビリンス -28-終わり】

作者注記

本作はNoteに投稿しているパルプスリンガーをモチーフに小説を書く、という企画の11作目だ。参加者は23人?いるので後12本だ、ガンバレ俺。

と言う訳で今回の主役はこちらの方。

akuzume=サンです。ローマ、コーン、タピオカ……何もかも懐かしい。

キャラクター設定についてはご本人様よりある程度かたまった内容が供与された為、それに準じた形で登場させていただきました。エルフの王子がかっこよくてたよりになるのはリスペクト元もそうだからです。

森と言うシチュエーションも王子が活躍するのにうってつけだったので出ずっぱりでしたね、エルフの王子はひかるし偉大。

レディ・ドゥームとダーヴィも魅力的なキャラなのにあんまり出番がなくて申し訳ない限り、また日常回とかでリベンジ出来たら……積みタスク……

搭乗機である「グラディエーター」もローマ剣闘士を人型機動兵器としてスケールアップする形にしました。本当はグラディウスとバックラーから変形するというアイデアがあったのですがあえなく作中では描写する機会が用意出来なかったのでした、残念無念。

ご参加ありがとうございました。

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#小説 #パルプスリンガーズ #スーパーロボット #毎日更新

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