魂の灯 -65- #ppslgr
「しかし、次、次か……」
「これで野郎が諦めると思うか?」
「無いね、それはない。アイツの行動方針は明確だし」
バティは手にしたスマホに一連の騒動についてタイムライン化すると、その様をイシカワに示してみせた。
「アイツの行動は基本に忠実で、こっちの裏をかきつつ慎重に自分の勢力を拡大するように行動してる。RPGで経験値溜めてレベルあげるみてーに、ちょっとずつ犠牲者を増やして、次の行動が出来る段階になってからより多くの餌を補充してるって寸法さ」
「っつーことは野郎の狙いはやはり」
「関東一帯くらいは更地にしねーと気がすまないんじゃないかな。むしろそれも通過点だと思う」
「マジでイルってやがるな」
顔をしかめたイシカワに、バティはキマった眼で次の行動を告げた。
「時間がない、オレの見立てじゃ次にアイツが起こすアクションは、東京一帯住民を取り込んで東京都そのモノを馬鹿でっかい化け物にするつもりだ」
「オゥ、シット。中には一般市民がゴマンと詰め込まれてるって訳だ」
「そう、その通り」
「で、バティはどうすんだ?」
「決まってる、付け焼き刃でもこっちの戦力を強化しないと……でも今更土壇場でソウルアバターをいじったところで、どこまで強化出来るか」
「俺にドープでクールなアイデアがある、耳を貸しな」
背を伸ばしてイシカワに側頭部を寄せたバティは、吹き込まれたアイデアに眼を丸くして問い返す。
「マジで言ってんのそれ!?」
「大マジにマジだ。それともやっこさんに白旗でもあげっか?」
「ああもうやるよやってやる!あの勘違い野郎の横っ面ぶっ叩けるなら何だってやるさ!」
「決まったな。そうと決まればチューニングだ」
「ホントならもっと落ち着いた状況でやりたかったなぁ!」
ぶーたれつつも、二人は自らのノートパソコンの有りかに向かって駆け出す!
―――――
蒼天の元、天まで届かんばかりにそびえ立つ東京屈指の高層塔。神話のバベルめいた銀の長塔の切っ先より上空に、黒甲冑の巨人がその機影を地上に映していた。その背には翼めいた光を噴射する推進機が一対負われ、腰には無骨の一言に尽きる大太刀をさしている。
レイヴンの乗機、イクサ・プロウラは暗色肉塊に仕込んだ複数の発信をたどり、この場へと巡り合わせたのだ。
「最善を尽くしても、いつだって間に合わない物は、ある」
視認するより先に、イクサのコクピット内のモニターがこの場一帯の異常を真っ赤に染まり伝える。
瞬間、銀の長塔の根本よりあの暗色肉塊がすさまじい勢いで塔を駆け上がったかと思えば、まるで傘をひらくがごとくアーチ状の覆いを周辺一帯へと掲げた。そのまま見る見る暗黒塊はその質量を増して都市を飲み込んでいき、長塔一帯を暗黒超越怪異へと作り変えた。
塔を覆った肉塊は膨れ上がると、まるで貴婦人のドレスの様に姿を変えて、塔先端からは奇妙に節くれだった魔の女神がけたたましい笑い声をあげていく。
「それでも、現実に捨てゲーって物は無いからな。やってやるとも」
【魂の灯 -65-:終わり|-66-へと続く|第一話リンク|マガジンリンク】
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