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魂の灯 -48- #ppslgr

向日葵のそれによく似た構造の、人体作りの大華は腕手の葉を広げ、頭頂の無数の舌で覆われた蕾を花開かせると、ドクロの雄しべをおどろおどろしい所作でゲタゲタと震わせた。例えるなら、幼児が人形の手足をちぎって草花として積み上げた、そんな印象の怪物。

「悪趣味だな。行方不明者が材料でないと良いんだが」

嫌悪を招く怪物の異形を前にして、冷めた反応を返す。この手の怪異は、今回の事件のみならず、飽き飽きするほど遭遇してきたのが彼の人生だった。今更この程度で動揺するのもバカバカしいほどに。

ネジ曲がった腕そのものの枝葉を伸ばして、コチラを捉えんとする人体華の捕縛をすり抜け、ラセン階段の手すりに飛び乗ると重量をのせてスライドする!錆びてめくれ上がった塗膜の断片を散らし、人体華を翻弄しながらも地下へ、地下へ!

その図体のデカさがたたってスムーズに追い詰める事の出来ない人体華だが、ヘビが曲がりくねって獲物に食らいつくが如く、ラセン階段のうねりに身を任せて伝わり這い寄る。大質量の肉塊が鉄の手すりを打ちたて、軸を通して地下を揺さぶる!

「こっちだ!来い!」

煌々と照る得物が照らし出す床がごく一般的なコンクリートであることを視認しざまに、滑る手すりを蹴って空中で身をひねり回転着地!その後をムカデめいて人体足を打ち鳴らし猛然と食らいつく人体華!そのドクロの、人一人充分に噛み砕きうるアギトがレイヴンに迫る!圧縮した魚の様な生臭さに辟易しつつも、真っ向から光を奮った!

「ア”ア”ア”ーッ!?」

真っ二つに分断されたドクロがおぞましい叫びを上げ、その内側から肉芽が進出急成長を重ね、老若男女無数の顔が花びら同然に咲き誇った!顔の花弁は一様に叫びを上げ、舞い散ればレイヴンの周囲を旋回包囲!

潰れた眼から血涙をまき散らして憎悪に咆哮あげる顔花弁の渦、更には間隙をついて歪にねじれのたうつ千手が迫りくる!物量で押しに押す怪物を前にして、レイヴンは不敵に笑う。

「笑止……!」

空気の流れから背後に食らいつこうとした花弁を肘打ち!四散する花弁を見ないままに正面から迫る突きを柄頭で叩き落とし、三本まとめて掴みかかってくる腕枝を輝きが薙ぎ払う!暗緑の謎めいた液体が断面から吹き出すも、次々に襲い来る顔花弁に腕枝の猛襲!

「おおおっ!」

柄を握り込むと、光刃の輝きが増す!もはや戦艦が灯す探照灯めいて、地下洞を昼に変えていく!剣が放つ恐るべき熱量に怯む怪異!その一瞬の隙に合わせて光刃が舞えば、次々に顔花弁を焼き尽くし、灰燼へと変えていく!苦悶をこぼす猶予すらなく消し飛ぶ顔、顔、顔!

「ア”ア”ア”ーッ!?アヴバッ!アバッ!アババババ!」

人体華のおぞましい顔花弁が、並み居る腕枝が、脈打つ胴軸が見る間に刻まれ、飛び散る体液すらも光刃に炙られ揮発していく!大上段に振りかぶられる一刀!

「虚無から生まれし者、灰を介し虚無に帰れ!」

拒絶の言葉と共に振るわれた一撃が、コンクリートの墓標の内にて、忌むべき怪物を烈光と共に灼く!

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