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完全無人自律稼働都市Tokyo

 旧世紀の高層ビル群の樹海が私を出迎えてくれたが、そこに生の気配は何ら感じられなかった。
『今更、東京に何しにいくんだい』
 叔父さんの問いかけが私の中で反復する。目の前では、修理部品だかを積んだ小型の無人宅配車がのんびりしたペースで通り過ぎていった。
「だって、絶対面白いじゃん。人がいない都市なんて」
 旧世紀の東京ロックダウンに伴って、東京という都市は完全無人かつ自律にて国家運営に必要な機能を供給する機械都市へと作り変えられた。
 デジタルメディアでは、完全に無人化が完成するまで紆余曲折あったって記載があったけど、完成してしまったら日本人は結局そのことに慣れてしまった様だ。
「おーすごーい」
 スマホで実況配信を継続しながら、人っ子一人いない機械都市……果たして人類が存在しない空間を都市と言って良いのか考えてしまうが、その綺麗に舗装された歩道を歩く私の眼に、何か光る物が落ちているのが目に写った。
「何だろ?」
 無人化された都市に、余分な物が落ちてるのはおかしいとか、そんな事は一切考えずに背を屈めた私のリュックに何かが当たり、ころんだ。何かが破裂したような音。そして二度三度と傷のないアスファルトに穴があく。
 弾かれた様に走り出す私の前に、蜘蛛を機械再現したような巡回無人機が落下。その紅いサイレンを点滅させながらカメラ・レンズをコチラに向ける。
「警告、本区画は有機生命体の侵入が認められておりません。滞在の意志を確認次第、排除行動を開始します。直ちに退去行動に移ってください」
「え……?」
 思考がなおのこと止まる。縮こまった私に向かって、鉄蜘蛛はその金槌の先のような足を振り上げた。だが、鉄蜘蛛の体表に火花が散る。銃撃?
 呆然とする私の眼の前で、ボロをまとった誰かさんが、鉄蜘蛛の頭部に飛びかかって刃物を突き立てたのが僅かに見えた。
 ここは完全無人自律都市TOKYO。有人社会に居場所がない者が集う魔境だと、その時の私は理解していなかった。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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