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魂の灯 -64- #ppslgr

バティの言葉に、レイヴンは怪訝な顔で眉根を寄せる。

「そんなに不思議な事か?」
「へ?周囲からするとそうでもないの?」
「そりゃあそうだろう、年がら年中あんだけ云云悩んでいたら、見ている周囲の人間はそれなりに気にかけるってもんだ」

彼の言葉に、バティは眼を丸くして前かがみに額を抑える。

「マジ?」
「大マジにマジ」
「マジか……そうかぁ……」

何処か間の抜けたやり取りに、黙って見守っていたイシカワはこらえきれずに吹き出してしまった。その音に振り向いては、バティは再度頭を抱える。そのままうずくまって悶絶。

「オレの事なんて、誰も見ていないと思っていたよ」
「人間は集団で生きる生物だ。生きることがうまく行っていない個体がいたら、それとなく気にかけるのが本能なんだろう」
「あー、それ心に留めとく。あーはずかしー!」

ひとしきりうずくまって悶絶した後、限界まで縮められたバネが跳ねるようにバティは立ち上がった。

「で、どうするんだ。まだやるか?」
「もし、さ……やめるって言ったら、レイヴンはどうする?」

バティの疑問に、レイヴンはじっくり一分眼を閉じた後に、淡々と答えた。

「どうもしない。続けるもやめるも、お前の人生だしな。俺がアレコレ強要するのはおせっかいの度が過ぎるというものだ。なにより……」
「なにより?」

その時の彼の顔は、多くの感情が入り混じった果てに訪れた、混濁の果ての凪を思わせた。

「疲れたら、休んでもいいし、止めたくなったら止めても良い。自分の人生において自分の自由意志こそ、もっとも尊重されるべきだ。俺はそう考える」
「そっか、そうだよな。自分の事くらい、自分で考えて決めるよ。でも」

静謐な凪めいた表情のレイヴンと対象的に、バティはその眼に炎をともして答える。

「やる、まだやる。自分が行き詰まったとかでやめるならともかく、ブルシットな横槍で無理矢理止めさせられるのは絶対にゴメンだ」
「良い返事だ」

バティの言葉に、レイヴンは再び不敵な笑みを戻すとホルスターに収まっていたあの光刃の柄を投げはなった。宙に投げられたバトンめいて回転するそれは、元からそうであったかの様にバティの手に収まった。

「やるよ」
「エッイイの?」
「俺は他にも色々あるからな」

試しに握り込むと、柄の先からはすんなりと光刃が生えた。レイヴンのそれとは異なり紅く湾曲した、カタナめいた刀身だ。その刃は焔めいて煌めき、イベントホールの冷めたホワイトを赤く照らし出す。

「結構、まだまだやる気はあるみたいだな」
「ええーこれそういう奴だったの?」
「そういう奴だ」
「だったらアンタの前で試すんじゃなかったよ!」

バティのぼやきに苦笑しつつも、レイヴンは上空に影を作っていた自身の愛機へ、ワイヤーを掴んで飛び戻る。

「ひとまずヤツを追う!そっちは迎撃体制を整えてくれ!」
「わかった!場所がわかったらすぐ教えてくれ!」

イベントホールを覆う巨人の影が行き過ぎると、そこにはつかの間の晴れ間と青空が戻ってきた。

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