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スパム・スカム・ボット・パレード

辛うじて顔の凹凸が造形されたのっぺらぼうのマネキンが、脱法粉砕弾のヒットで発泡スチロールの様に砕けた。陶器めいた破片が、かび臭い路地裏の暗がりに散らばっては動かなくなる。

「コレで今日は10体か……」

疲労の濃い顔をキツイメイクで誤魔化した痩せぎすの体型に、ファッションとは無縁の有り合わせの服をまとった女は、硝煙吐き出す銃を下ろしてため息をつく。そんな彼女に向かって声をかける剃り込みを頭部に入れたひょろ長いもう一人の女。

「シャディ、そっちはどうヨ」
「10は取った。今日のノルマには程遠い」
「ハッハー、こっちはもう数なんか数えちゃいねーヨ」

ひょろ長は腕に巻いたスマートウォッチをフリックすると、出てきた数字にげっそりとやる気を亡くす。

「ウェー、まーだ16だってさ」
「結局どっちもまだまだじゃん」
「何かサー、今日スパム連中少なくなイ?」
「イイコトじゃん、やめ時かもな」
「ヒヒッ、そうなりゃ次は身売りしかネーヤ」

シャディは動かなくなったマネキン……スパムを蹴り転がすと次の獲物を探すべく路地裏の奥へと歩を進める。
まだ昼前だが、普段のノルマ消化ペースには程遠い。本来ならそれこそ適度に駆除しないと足の踏み場もないというのに。

「奥に反応あり、アタシがいく」
「アイ、アイ」

迷わず、スパムどもの群がる何かへと歩み寄る。そこで、シャディは本来あり得ない物を視認した。

「こいつら……!?」

白塗のマネキン達は、肉を分け、骨を取り出していた。

解体されている何かは原型を留めておらず、朱にまみれたそれはかろうじて人間の残骸だと判断出来た。

あり得ないはずの事態に、シャディは吠え声をあげて銃を乱射する。赤い水溜まりに白い破片が砕けては降り注いだ。

【続く】

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