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魑魅魍魎の国

 シーサーが、淡々と朝の通勤電車に入ってきた。私の目の前で。
 人が出歩かなくなった昨今、社会インフラに関わる私はこうして渋々通勤を続けているのだが、かつてと同様に運行する公共交通機関は今や怪異妖怪が大手を振って乗り込んでくる。
「あの、お姉さんは社会人の方ですか?」
 隣に立っていた古めかしいセーラー服に、肌色は良いものの髪がワカメのような色合いの女学生に何やら声かけられると、ええ、とそつなく返答した。
「お仕事大変ですね、いつもありがとうございます」
 なんの妖怪かは専門家でないのでよくわからないのだけれど、悪い子では無いらしい。
「いえいえ、これも務めですので。貴女はどちらから?」
「東北から修学旅行で来たんです。私達の学校は本当に幽世深山の奥の奥で、こうしてビルの立ち並んでる所を見るとまるで異世界に来たような気分になりますね」
 修学旅行、妖怪にも修学旅行があるらしい。
「大手を振って行動出来るのは快適なの?」
「ええ、まあ。一応人間の振りをするのが旅行に際してのルールなんですけど、地元の方々がこの様子なので」
 ずらりと座席に並んだ魑魅魍魎は大体東京都民らしい。一体全体どこにこんなに隠れていたんだろう。一斗缶頭の人は何処からきたのかしら。
 楽しげに微笑むワカメ頭の女学生が、不意に顔を強張らせて私の後ろに回った。
ドアから入ってきたのは、時代錯誤な平安装束の男性で、彼が入ってきた途端に怪異達は雲散霧消とばかりに逃げ出してしまったのだ。
「どうしたの?」
「あの人陰陽師です……!いえ、悪い事はしてないつもりなんですけど!」
 陰陽師の人はすいた座席に奥ゆかしく腰をおろした。人外といえども、必ずしも人間が恐ろしくないわけでは無いらしい。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

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ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

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