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ノースシ・ノーライフ(6-3)

繰り返しになるが、レインボーフードはニンジャのスシ職人である。
もっとも、電脳論理都市化が高度に進んでいるネオサイタマにおいて、UNIXをハック出来ないのは極めて不自由な活動を強いられる。

彼もまた、ヤクザ・ミッションをこなすために初心者レベルのハッキングこそ身につけた物の、そもそもレインボーフードにはインターネットを活用して悪さをする、その発想と素養そのものが大きく欠損しているといってよかった。

そんな彼がIRC-SNSの検索だよりでケモ動物の情報を求めたとしても、そう咎めることは出来ないだろう。

「え~と、ケモ動物……これでどうだっと」

彼が据わったUNIXデッキのモニタに、ブラックとグリーンのCLI(コマンドラインインターフェース)がスイカの縦縞めいて踊る。
そこに流れてくるのは、ネオサイタマ市民が悪意なく軽い気持ちで打ち込んだ、ケモ動物についてのハイクめいた文章だ。

『初日の出 道中 ケモ動物 目撃 開運なり』
『年明けからの初ケモ動物!撫でさせてくれたし今年はいい年になりそう!』
『フヒ……新年初ケモ動物……いただきました……』

ケモ動物の人気は実際本物らしく、生々しい実況報告がSNSに次から次へと上がってくる。だが帰宅しなかったのは、ケモキの証言からすると18時間以上前の話であった。スクロール速度をニンジャにするレインボーフード。

「ん……?もしかしてこれか?」

その時、レインボーフードが見つけたのは、ある一般女子高生があげたと思しき画像。そこにうつっているのは黒髪ボブカット、マフラーのラフカジュアルな女性と、ケモ動物が連れ立ってネオサイタマの路地を歩いている一幕であった。

『見てみて!ケモチャンがついて行ってる!いいなー個人でも飼えるのかなー』

そしてそのSNSツリーには、続けてその退廃的ボブカットの動向が、逐一連なっていた。それが投稿者の友人による、無邪気なストーキング投稿であったことは、レインボーフードが知るよしも無い。ツリーの末端には、ボブカットが古めかしいアパートにケモ動物をいざなっているワンカットまであがっていた。

「アパート『麗巣泊』、ここか……しかし一体全体どこの」

ネオサイタマは複雑怪奇に入り組んだ、電脳九龍城砦めいた迷宮である。
インターネットが発達しているとはいえ、このような侘びしいアパートが必ずしもインターネット上に登録されているわけでもない。

「お困りかね?」
「アッハイ……ヒェェッ、ど、ドーモ、レインボーフードです」
「ドーモ、ダイダロスです。元旦早々、随分と仕事熱心だね君は」

レインボーフードへアイサツを返したニンジャは、その身を黒のサイバーニンジャ装束、頭部には円環型サイバーグラスに、古の蛇怪物を彷彿とさせる無数のLANケーブルが頭髪めいて垂れ下がっていた。

ダイダロス、現実世界でエンカウントすることはきわめて稀な、インターネットを司るソウカイヤ・シックスゲイツの一員であった。

【ノースシ・ノーライフ(6-3):終わり:(6-4)に続く:第一話リンク

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