世界を巡るは牙持つ乙女

まず、彼にもらったナイフ。凄い切れ味で、刃持ちもいい。私はもうこれじゃないと獲物の解体はしたくなくなってしまった。

次に黒橙の弓。コンパウンドボウって呼ぶんだって旅先で出会った人が教えてくれた。滑車がついてて私の力でも簡単に引けるこの弓は、今や私の狩りになくてはならない相棒。

「シャンティカ」
「止めても無駄ですよ、長」

巨樹の洞に作られた私の自室で荷造りを進める私を、訪れた里の長が呼び止める。私と同じ翠緑の長い髪に、木々の恵みで織られた服をまとった見た目だけなら私よりちょっと年上に見えて、その実ずっと長い時間を生きてる人。

「そうではない、私はお前の決断を尊重するつもりだ」
「ありがと、無茶はしないですよ。死にたくないですし」
「全く、探索に出させたのはほんのわずかな期間だったというのに、引っ込み思案のお前に何があったというのだ」
「色々。楽しかったですよ」

獣の皮をなめして作った背負い鞄に、食料、服飾品、その他諸々、旅に必要なはずの物品を詰め込む。私物の内、大事にしまっておきたい服を長に差し出す。

「お願いです、この服だけは大事に保管してもらえませんか?」
「お前が異なる世界から持ち帰った服、か。良いだろう、しかし危険はないのか?」
「服ですよ、ただの服。でも大事に取っておきたいんです」
「承知した。もっともお前の自宅はいつでも戻ってこられる様に残しておくつもりだったが」
「ありがとうございます、冒険に疲れたら帰ってきますね」

長に礼を伝えて、鞄を背負い弓を掴む。ナイフはいつでも引き抜ける所に。

「長、行ってきます」
「気を付けて行きなさい。お前の帰る場所はいつでも、ここにもあるのだから」

暖かい言葉に頭を下げて、長く住んだ自宅を出る。
時間はちょうど太陽が顔を出した頃合いで、未明から荷造りしていた私の眼には刺激が強い。

「何処から探そうかな、あてなんてないけど」

あてどなく、私は街の方角へ歩き出した。

【つづかな…い?:796文字】

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