見出し画像

魂の灯 -91- #ppslgr

「馬鹿な……そんな馬鹿な!Why⁉大多数の都民を一瞬にして、麿の内から無傷で摘出!そんなありえないでおじゃる!」
「ソレが居たんだから、お前たちは実に運がない。そういうことだ」

黒騎士イクサ・プロウラの後方にふわりと浮かぶ奇妙な機体は、ソウルアバター・ソロモン。世界渡りの秘術を可能とする機体であった。

「急に連絡が来た時は何事かと思ったけれど、いやあ間に合って良かった」
「恩に着る、後でCORONAダースでおごるぜ」
「ぐぬっ、グヌヌヌヌヌ!」

軽口をたたき合う二機を前にして、暗黒ボンボリ麿は不気味に蠕動し、ヒルめいた触腕を数多に打ち振るう!その様は荒れ狂うメキシコダイオウイカの如しである!

「都民の供給がなかろうと!ヌシら二人ごとき麿の敵ではないでおじゃる!」
「やってみろよ、出来るもんならな」

レイヴンの挑発に、暗黒ボンボリは舞い吹く雪華を黒鞭を振るい挑みかかった。あまりの数に網目めいた軌道を示す暗黒帯を、イクサはドリル回転バレルロール軌道を持って貫く!鞭の嵐はむなしく空を、そして深雪を打ち払って雪華を散らす!黒騎士の居場所は……麿のふところ、目の前!

「なっ……!」
「遅い」

黒騎士の居合が袈裟をたどり麿を裂く!切り返した一合が麿を正面から唐竹に割る!跳ねた切っ先が交差を描き逆に断つ!斬る、斬る、斬る!太刀筋は降りしきる雪華の内で、光を帯びて曼珠沙華を象った!

「おっ、おじゃっ……」
「残迅無量光、閃!」

断末魔を挙げる器官さえ斬撃にすり潰され、暗黒ボンボリ麿は見る陰もなく光の軌跡の中において四散。途方も無い規模であった巨敵はもはや、霞となって果てていった。残心を決めた後、黒騎士はゆるりと携えた大太刀を収める。

「まずは、良し。助かったぜ」
「どういたしまして」
「すまんがまだやることが残ってる、呑みが後で」
「もちろんわかってる。また後で」

黒と幻色の二機は手甲を合わせて打ち鳴らすと、またたく間に黒騎士の方が水面の影が揺らぐようにその姿を消していった。飛び散った暗黒物質は最早正体不明の雪の中に埋もれ、白く塗りつぶされていく。

「まったく心配性だね、彼も」

―――――

場面は戻って、東京湾!
二体の巨神の激突により、当初空を塞いだ暗雲は吹き払われ、逢魔が時の菫色が姿を現していた。

「いい加減……諦めろっての!」
「あきらめない……僕は諦めない!」

暗黒と翠緑の巨大存在は、その規模に見合わない速度で拳を持って頭を打ち抜き、振り上げた脚は脇を強かに歪め、距離が迫れば己の額を再び相手と激突させる!

「まだやるってのかよ!何でその諦めの悪さを創作に当てられなかったんだ!」
「黙れ!僕にはもうこれしかないんだ!」
「あるだろまだ!生きてんだからよ!」

まるで隕石衝突と聞きまごうほどの衝撃音が、二者の決戦を見守る者たちのスピーカーを酷使した。搭乗者保護によって適正までデシベルを落とされてなお、巨大質量の激突音は彼らに鼓膜の危機をもたらすほどであった。

【魂の灯 -91-:終わり|-92-へと続く第一話リンクマガジンリンク

ファンタジーミステリー小説も連載中!

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日18時更新!
ロボットが出てきて戦うとか提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #毎日更新 #毎日note

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL