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戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-1- #ppslgr

「マグロだ」
「お、おう」

 超巨大自由売買商業施設”Note”。その一角にあるバー「メキシコ」にてポーカーにいそしんでいた俺に唐突にかけられた言葉がそれだ。いつも通り黒づくめの胡乱な風体の俺、R・Vに声をかけてきた相手は白詰襟の軍服を肩掛けにしたワイルドな海の男だ。その腰には白鞘の日本刀が差してあった。

「A・D、もう少し言葉を増やしてくれないとマグロがほしいのか食べたいのか釣りたいのかわからん」
「そうだな、強いて言えば、全部だ」

 要するにマグロを釣って入手して食べたい、という事らしい。上記のやり取りを横で聞いていたミリタリーとカジュアルの折衷みたいな恰好の良く鍛えているのがわかる雰囲気の青年が笑いをかみ殺す。つい先ほどまで俺とポーカーに興じていた6・Dだ。ちなみにポーカーの勝敗は1勝9敗で俺の負け越しである。ひとしきり笑いを抑えると彼も会話に参加してきた。

「それでさ、A・D。俺達はどうすりゃいい?」
「あ~そう、それだ。どっちかでいいんでマグロ釣りに行かないか?」

 そういう事か。納得はしたもののまたずいぶんと急な誘いである。マグロ釣りには興味はあったが、残念ながら俺は釣り自体が素人だ。6・Dの方に視線を向けると彼は彼で肩をすくめる。積極的に参加したい訳ではないが断固として固辞したい訳でもない、という様子だ。さて、どうした物か。

「なんだぁ、お前らどっちも気乗りしないって事か?」
「まあ、そうだな。断るほどではないが、かといってもう一方を押しのけて参加したい訳でもないというか」
「何だよ冷たいな、普段さんざん俺が作ったメシ食ってるだろ?」

 それを言われると、弱い。パルプスリンガー達の中で積極的に料理を作るのはA・DとS・RそしてS・C、他数名くらいでその恩恵にあずかる方が多数派である。6・Dの方はというと懐からいつも常備している1対のダイスを取り出し、俺の方へ向かって差し出してきた。

「決め手に欠けるなら、コイツで決めない?」
「オーケー、いいだろう。もっとも運試しだと十中八九俺が負けるな」

 俺の返答に苦笑する6・Dからダイスの片割れを受け取る。

「アイコなら振りなおし、それ以外なら目が多い方が勝ち、良い?」
「ああ、それでいい」

 勝負の条件を確認すると、A・Dが見守る中、俺と6・Dはテーブルに向かってダイスを振った。カランコロロン。果たして出た目は……6・Dが、6。俺が、1。ここまで天運に見放されていると、ブッダは運命の神ではないとわかってはいてもブッダを殴りたくなるものだ。

「よし、決まりだ。R・V、指定の日時にヨコスカ港でな」
「あいよ」

 参加者が確定して満足したのか俺達に背を向けて上機嫌で鼻歌を歌いながらキッチンに向かうA・D。その背中を見守る俺と6・D。

「今更だけどさ、R・V、運ゲーに弱すぎない?」
「おうとも。戦場での悪運だけは先祖伝来、誰にも負けないけどな」

 俺の返しに笑ってCORONAを呷る6・D。もちろん先ほどのポーカーもギャンブル無しのただのゲームだ。もしギャンブルだったら俺は数日の内に蒐集品の武具を一つ残らず巻き上げられているには間違いない。Oh、ブッダエイメン。不貞腐れながら俺はマグロ・ジャーキーを齧った。

【戦艦でマグロを釣りにいくんですか?おかしいと思いませんかあなた?-1-終わり:-2-へと続く

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