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魂の灯 -53- #ppslgr

調整槽をくまなく覆う、暗肉が蠢動したかと思えば一斉に鋭い槍衾と化して絨毯爆撃!たった一人の侵入者に向けて凶器が降り注ぐ!硬質な衝突音と共に、放たれた鋭利物は絡み合うように切っ先を収束させた。

「おっと、もっとじっくり時間をかけるつもりが……」

勝利を確信した少年のつぶやきを、あっさりと次に起こった事象が否定する。集約された槍の矛先は、隙間など無いほど密集していたにも関わらず瞬断され、炭クズとなって爆散する!拓けた空間から姿を現したのは、あいも変わらず無事な黒い男の姿。手にした鋼はなおも焔をまとい、その身からは水墨画めいた黒墨の剣気が滴り世界へと広がっていく。

「……ッ!」
「回避不能な密度の槍の弾幕、まあ普通なら殺れたとは思うだろうな。だがこの程度では俺は殺れんぞ」

反応は、次なる一撃。怒りのままに足元から束縛してやろうと床より暗色の触手を生やしたてて、悠然と立つ男へ強襲させる。瞬間、拘束が達するよりも疾く男が飛ぶ!その軌跡を追って触手が伸びる!

「おおっ!」

生半な速度では振り切れないであろう触手の殺到を、あろうことか男は踏み台にすることで飛び渡り、迫る触手を燃えたぎる一撃で薙ぎ払う!どれほどの熱が込められているや、鋼鉄の切っ先が触れた途端に、多大な熱量が伝搬し触手の群れを根本まで炭化させていく!

曲芸パルクールめいて触手の群れを飛び渡り、次々灰になるまで焼き尽くす男に対し、少年はさらなる一手を打つ。閉鎖空間の上下左右より突き出したのは、塔もかくやといえるほどの豪腕。巨腕がその質量のままに、少年向かって突進する男へと四方八方から襲いかかった!激突音が地下閉鎖空間を揺らす!

だが、巨大な拳の奥に姿を隠した敵に対して、少年は油断しなかった。そもそもが、巨大質量の密集衝突にも関わらず奴の端切れ、肉片の一片すら飛び散っていないのだ。そして、彼の警戒は実際無駄にはならなかった。

引き戻し、もう一撃を放とうと指示を出した巨腕が、引き戻せない。まるで固まったセメントに埋め込まれたがごとく、ガチガチに拘束され身動きを取ることが出来ない。囚われたのが表層だけであれば、かたまった部位を捨てて中身だけ引き戻す手もあったが、中身に至るまで完全に停滞している。

「クッ……何故だ、何故動かない!」

少年の疑問は、すぐに目の当たりにした事象が答えてくれた。暗色の巨腕は、みるみる内に真っ白な霜に覆われるほどに凍てつき、氷結していた。柔軟なる暗肉と言えど、内包する水分を凍結されてしまえば動きようがない。
次の瞬間、凍りついた巨腕群はガラスめいて砕け散り、地下の暗黒に細雪が舞い落ちる。中からは、当然無事にして無傷な男が姿を見せた。

「高熱と低温……!?お前の能力は、一体なんだと言うんだ!」
「あててみろよ、エジプト旅行位は贈ってやる」
「ふざけるな!」

再度の、豪腕による一撃。それすら、床より忽然と湧き出した血溜まり、そこから這い出た血流が絡め取って血溜まりの中へと引きずり込んでいく。
男の腕がかすみ、豪腕は炭クズとなって弾け跳んだ。

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