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アルトワイス新聞社所属の記者の備忘録より

 冥竜シャール・ローグスは引きこもりの読書狂である。これは竜族としては、変わり者も良い所だ。もちろん、竜族の長い長い寿命において、各竜はその途方も無い時間を持て余し、使い方に苦慮しているわけだが、彼については違うと断言出来る。
「図書館というものの存在を知った時には、自分の身体の大きさを大層恨めしく思ったよ」
 私が取材を申し入れ、彼という竜の風変わりさを教えてもらった時の言葉だ。実際彼は黒曜石めいた鱗に覆われた顔をくしゃりと歪めて微笑み……そう、あれは微笑のはずだ。微笑んで答えた。
 私が新聞という物に貴方の事を記載したいと申し入れた時も「新聞も紙媒体だったね?刷り上がったら是非とも保管用と読む用に二部売って欲しい」と了承してくれた。もちろん、保管用と読む用と、それから展示用に三部お送りしたとも。
 また、かの竜は知恵者であることで一部の者には知られている。我々のみならず、解決に行き詰まった者はこぞって密やかに彼の住まいへと足を運ぶそうだ。
 もっとも、彼のその知恵が発揮されるのはもっぱら死者が出た時だ。不可解な死に方をした不遇な被害者を弔う為に、死因、動機、犯人に至るまで調べ上げるのである。
  そのためから、彼の冥竜という屋号とも言うべき称号は、冥府に縁があることからついた……といえなくもない。なぜなら、彼が珍しく外出した時には、そういう不可解な死に様に遭遇することがよくあるそうだからだ。彼からしてみれば、完全なる偶然であり、意図的な所作ではない、とのことだが……実際そうなのだろう。でなければ、私もそうそうに死んでいたかもしれない。この覚書は取材から三ヶ月ほどたったタイミングで備忘録として書いている。どうかこれが遺書とかになったりしませんように。

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

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