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魂の灯 -52- #ppslgr

グロテスクな、生体的暗黒造形物と化した調整槽の奥へと進む。
皮膜が薄い捕縛者の様子を確認するだに、まだ生存はしているのがわかる。物理的な栄養源ではなく、電池として活用する以上は殺してしまっては用途が閉ざされてしまうので必然ではあったが、さりとてこの状態が今後も続けばいつまで生存出来ているか怪しいものであった。

「一人二人であればすぐ開放しておさらばで良かったんだが、こうも多いと頭を叩くしかない訳で……いるんだろ、出てこい」

光刃を掲げて闇を照らす。奥底から暗肉を割り出て来たのは、あの時の白髪の少年だった。

「想定していたよりはずっと早かったね。流石の猟犬っぷりだ」
「犬扱いか鳥扱いかどっちかにしろ。まあそれは良い、どうせやめろと言って聞く気もないんだろう。それはこの惨状を見ればわかりすぎるほどわかる」
「……何がわかる、と言うんだい」

大仰に腕を広げてこの暗黒神殿と化した地下施設を指し示すと、レイヴンは答えた。

「クリエイターに発現する技能、それは魂、精神の在り様の現れといっていい。だからこそ、俺は自分のそれをひけらかすのは、安易に見せられない代物を見せつけるような、例えるなら性的嗜好を公共に晒すようなイメージで忌避感があり、あまりやりたくない」

レイヴンの言葉に、少年は眉をつり上げて怒りをあらわにするも、黙ったまま彼の主張の続きを待った。

「しかるに、この有様がお前一人によって行われたなら、この惨状こそがお前の内面を表現している。他者を踏みにじり、食い物にし、世界を怪物で埋め尽くしたい。これはそう、世界にたいする憎悪の現れそのもので」
「もう良い!」
「要するに、お前は辛かったんだ。だが、その感情に寄り添われることはなく、ここまで増長してしまった」
「やめろ!」

声を張り上げ、内面をえぐり出す言葉を遮る少年。それを意に介さず淡々と言葉を続ける。

「あるいは、最初の最初で周囲に助けを求めていれば、こうはならなかったかもしれない。だがお前はもう拳を振り上げてしまった。俺はクソッタレな暴力装置として、暴力に返ってくるのは暴力でしか無いことをお前に示さなきゃならん」

光刃の光が止む。男は右手を左の掌に打ち付けると、何がしかを掴み勢いよく振り抜いた。それは赤く、黒く、脈打つ黒鉄の刀身だった。刃が生まれる過程めいたその得物は、遠目にわかるほどの焔をまとっていた。

「良くもぬけぬけと……遅すぎたお前が!」
「そうだろうとも、俺は、いつだって遅いんだ」

恐るべき煉獄の焔そのものを青眼に構えるレイヴンに対し、少年は十字架に掲げられた聖人めいて腕を振り上げた。

「お前一人くらい、無視しても良かったけれど気が変わった。お前は逃げ場の無いここでゆっくり刻んでやる……!」
「やってみろ。お前の憎悪とやらで俺を塗り潰せるか試して見るが良い」

挑発に対し、地下調整槽をおおう暗肉全体が大きく脈動した。続いて空洞全体を吠え声が振動させる!

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